藻谷浩介『デフレの正体−経済は「人口の波」で動く』(2010・角川書店)

閣僚問責決議について
 本の紹介の前に、ひとこと。仙谷、馬渕、柳田は、さっさと辞めるべきです。
 問責されるだけのことをしているのだから辞めて当然です。菅はこいつらの首を切って、ついでに民主党幹事長を岡田から小沢に替えて、前原も首にして、早急に適切な人物に挿げ替えるべきでしょう。働かない、もしくは働く能力のない人間を大臣にしつづけていったいどうするのでしょうか?
 その意味では、本当は、菅を小沢に挿げ替えるのが一番の解決策です。先の代表選で一位二位を争ったのが菅と小沢で、その菅がダメなのだから、当然、次は小沢であるべきです。この方がよっぽどすっきりします。そしてそれが実現できたとき、初めて2009年マニュフェストもついに守られることになるわけです。これは有権者との約束なのですから、現政府の軽視する姿勢は、まったく理解に苦しむものです。
 武器禁輸原則の緩和も、まったく何を考えているのか、という問題です。
 日本はできるけどやらないことがたくさんあります。非核3原則の堅持もそのひとつです。これらの政策は憲法9条を持つ国として当然の行動であり、それが日本の独自性でもあります。よりによって旧社会党が合体してできた民主党が、武器禁輸の緩和をするなど言語道断だし、民主党支持の有権者もそんなことを望んではいません。
 たぶん改憲を志向する松下政経塾出身のアホ議員たちが、民主党に対する支持を自分たちへの支持と勘違いして、もしくはそれを知っていながら利用しようとして、好き勝手なことを始めているにすぎないのでしょう。こうした政策は、武器製造メーカーの支持を一時的には得ることができても、長期的に日本外交を見た時、決して日本全体の利益にはならないと確信するものです。日本は民生品で国際競争に勝ってきたのですから。
 仙谷にしても枝野にしても、自分への支持で2009年に民主党が勝ったのではないにもかかわらず、検察とマスコミを利用して、鳩山=小沢から権力を簒奪して以来、自分たちへの支持がないことを薄々気づいているだけに、国家公務員の守秘義務の強化など、権力的な政策しか打ち出すことができません。
 そうした不安定な政権の維持が最優先されるがために、米中ロに対する屈辱的な外交(というかアホな外交)や、武器禁輸緩和や法人税引き下げといった経済界へのすり寄りによって、自らの政権を維持しようとする。そこには有権者の票によって政権を獲得したことに対する自覚がまったくありません。
 こんな政権は早晩退場することになるのだから、前原、仙谷、枝野のように民主党内閣崩壊後に自民党へと鞍替えしようとするスパイ連中は、さっさと追い出して、小沢を中心に本当の意味で働く内閣を作るべきだと思います。こいつらの頭の悪さは、これまでの日記に書いたように、枚挙にいとまがないのですから。

本の紹介

デフレの正体  経済は「人口の波」で動く (角川oneテーマ21)

デフレの正体 経済は「人口の波」で動く (角川oneテーマ21)

 マクロ経済を支持する人の説明で、いまひとつ納得できないのは、デフレスパイラルからの脱却のためにインフレ誘導をするというものです。疑問なのは、設定したインフレ率が維持できるのか、そして実際にこうしたマクロ政策でインフレを実現できるかです。こうした問題に「できない」と明確に答えたのが表題の本です。この本はマクロ経済のややこしい数式を使わなくても現在の日本経済は説明できるし、その解決策も示せるとしています。
 著者が「あとがき」でまとめるように、この本を一言でいえば、「経済を動かしているのは、景気の波ではなくて人口の波、つまり生産年齢人口=現役世代の数の増減だ」というものです。著者は、この方針に基づいて、日本全体と県別の生産年齢人口の推移を調査します。そして導かれるのが過剰生産と消費の減退によってもたらされる過剰在庫の問題です。
 かたや興味深かったのが、ある外資系企業が行なった世界同時不況前の数字です。
 世界には1億円以上の金融資産(不動産を含まない数字)を持つ個人が950万人いて、そのうち6人に1人、150万人が日本人という結果でした。しかもその合計は400兆円ということです。この割合は、日本人65人に1人の割合になる。また、日本全体の個人金融資産が1400兆円なので、残りの1000兆円はそこまで金持ちではない中の上の人々が持っていることになります(204-205頁)。そして、この1400兆円を持つ人びとは高齢富裕層であり、将来に備えるために金融資産を死蔵する。結果、消費需要不足に陥るというわけです。
 ここまで問題が明らかにされれば、いくつかの処方が可能です。
 死蔵された1400兆円を消費の活発な若者(25-40歳)に回す。その方法は、(1)福祉政策によって、困窮した高齢者の生活を最低保証する。(2)上記若者の所得を1.4倍化する。(3)女性の就労や経営参加を増やす。といった政策です。
 (2)によって、国内需要の減退を挽回できるわけです。
 著者はここで政府に期待するのではなく個々の企業の努力を促すわけですが、その意見に対しては、僕は懐疑的です。
 企業は長期的な社会全体の利益より、個々の企業の短期的利益を志向するものです。(1)や(3)に政策的介入が必要であるのと同様に、(2)も政策的に実現すべきものだと思います。そののちに来るのは税収の増加であり、政府は政策実現の大きな力を得ることになります。
 ここには書きませんでしたが、著者はこの本の中で、「日本製品のブランド力強化」や、最も安上がりである経済対策としての「外国人観光客獲得への注力」など、様々な提言をしています。かたや、外国人労働者の獲得、生産性の上昇への期待などといった虚妄を指摘しています。
 日本国内だけでなく近隣アジア諸国の人口動態を見れば、手に取るように諸外国の経済状況の予測もできるし、移民労働者の不足も予測できるからです。
 貿易収支を詳細に調べれば、じつは中国や韓国が日本のお得意様であること、かたやスイスやイタリアやフランスにとって日本が逆にお得意様であることが分かると言います。それはなぜかといえば、結局、BMWやベンツ以上のフェラーリといったブランドをこれらの諸国が持つからで、日本が目指すべきは、こうしたブランド力の獲得であることが主張されます。
 この本はそのほかにもいろいろ示唆に富む内容があるのですが、じつはこの本自体が、小泉と現政府が志向する新自由主義的政策の虚妄性を論証し、2009年民主党マニュフェストの基本的正しさを論証する点が、僕には、最大のメリットだと思えました。
 菅内閣は、松下政経塾出身者と権力亡者の手によって、新自由主義的政策を復活させようとしています。そしてそれによって、税収不足というかたちで自らの首を絞めている。このことがこの本によって論証されるわけです。それに対する解決策は消費税増税ではない。このことも、この本によって経済実態を見れば明らかとなります。
 これらの意味で、この本は本当に示唆に富むものです。
 上に書いたようにいくつか肯定できない点もありますが、それは全体に比べれば非常にわずかです。日本政府はこの本に基づいて新たな長期的・短期的経済政策を打つべきだと思われます。