姦吏(かんり)を一時に軍(いくさ)いたし打殺、日本を今一度せんたくいたし申候
 幕府を倒して日本を洗濯したいものだ
長州藩を攻撃した外国軍艦を幕府の役人が修復しているのを憤慨した。同(1863年)6月乙女宛)−−龍馬の言葉(朝日新聞2010年3月15日朝刊12版10面)

 ほかならぬ私たちが支払っている「思いやり予算」で在日米軍・座間キャンプで公開情報インテリジェンス部隊の経費が賄われているのがその典型だろう。この部隊がウオッチしている対象には日本も含まれている。私たちは私たちを監視する部隊のために、自らの税金を投げいれているのだ。しかも、「日米同盟はアジアの平和にとっての礎である」と確信して。全くおめでたい限りである。−−原田武夫・国際政治ナナメ読み「日本が世界に立ち向かえない3つの欠点」日刊ゲンダイ・2010年3月16日5面

 NHKの今年の大河ドラマ龍馬伝』は、オープニングのCGがかっこよくて、Fighter(戦士)という文字が暗転して、Idealist(理想主義者)になるところなどはとくに気に入っています。坂本龍馬には、「ともかく利益をもたらすこと」を盟約として海運会社を始めた頃の実業家としての側面もあって、いろいろ多面的な人です(NHKの『歴史秘話ヒストリア』でやっていて、この番組も、見たとき驚かされました)。
 日本人が一番好きな歴史上の日本人が龍馬といわれていますが、その理由は最後まで内戦を回避しようとした平和主義者な点が第一のように、僕は思ってきました。そんなイメージだったので、冒頭に引用したように、有名な「日本を今一度せんたくいたし申候」の言葉の直前が、「姦吏(かんり)を一時に軍(いくさ)いた打殺(打ち殺し)」という激しい言葉だったので、ちょっと面喰いました。でも、だからFighter(戦士)でも、あるんですね。
 そしてその日の夕方読んだのが、原田武夫さんの後半の引用でした。原田さんは、連載最終回の今回、最後のメッセージを書いていました。それが、まず欧米が狙っているのは日本勢の抱える富であり、甘言麗辞に騙されないこと。だからと言って内向きにならずに、常に情報を求めること。そして、金融危機を経ても米国はいまだ強力で、その巧みな点は、力だけでなく自主的に自分にしたがわせる術をもっている点であると主張します。その後にでてくるのが引用した言葉でした。
 日本の思いやり予算で米国が対日情報収集工作をしているとしたら、まさに「姦吏を一時に軍いた打殺」すべき状況だと思います。龍馬のこうした激しさが、いま必要とされているように思えます。
 もう少し詳しく考えてみましょう。
 米軍海兵隊がグアムに移転した後、日本に残る800人の海兵隊は、佐世保の揚陸艇を合わせても、決して「日本を守る抑止力」にはなりえないものです。米軍自身が、これは米国人救出のための緊急展開部隊であると位置づけているのですから、数日空港などを確保して、米国人の救出に利用するだけのものです。だから、鳩山首相がこれを抑止力と位置付けるとしたら、とんだ勘違いというべきです。かたや「日本が必要とする米軍は第七艦隊くらいじゃないか」という小沢民主党幹事長の発言は、まったく的を射た正確ものです。じっさい、在日米空軍は、アフガニスタン攻撃とか日本の防衛に全く関係ない任務をしているだけです。こんなものが日本にある必要はない。800人の海兵隊にしても、グアムじゃ遠すぎるから日本に置いてやっているだけなのだから、佐世保の近くの自衛隊基地に移転させれば済む問題です。揚陸艇が佐世保にいるのだからこちらの方が米軍には都合がいいのです。
 そして、以前も書いたけれどEU並みの地位協定への日米地位改定の改善が必要です。それがあれば、米軍に対する不安ははるかに軽減されるはずです。
 シュワブ陸上案は、旧来の海上案よりひどい案です。基地の騒音だけでなく、基地造成の廃土による環境汚染、海域汚染がはなはだしいものとなると予想されるからです。しかも完成するまでに10年近くかかるがゆえに、米軍すら好まないものです。だから、これが通ったら鳩山はもうダメだと思う。退陣にならないとしても、これじゃ政権を変えた意味がないからです。このあたりは今後、注意して見ていく必要があるでしょう。
 あと「日刊ゲンダイ」を除くすべての新聞、地上波TV、週刊誌が小沢批判を繰り返していますが、これらを見ていると日本人はみんな白痴になったのじゃないかと思えてきます。小沢疑惑は、検察の異例の小沢秘書逮捕から始まった。そして最近の石川議員逮捕につながるのですが、結局小沢は不起訴だった。そして、逮捕された秘書や石川議員に関しても裁判での無罪が予想されている状況です。つまり、マスコミや週刊誌が騒いでいるにもかかわらず、結局小沢を黒とする証拠は何も出てこなかったということです。それでも、マスコミが騒いでいるのは、何とか民主党をつぶして、旧来の自民党との蜜月の間に確保した既得権益を守りたいという一心からの行動であると考えるのが自然です。
 まだ胡散臭いと言い続ければ、これまで根拠もなく小沢たたき、鳩山たたき、民主党たたきを続けてきた自分たちを正当化することができるからです。
 考えても見てください。今マスコミが不十分だと批判している民主党の政策自体、自民党政権が続いていたら全く顧みられなかった問題です。だから、マスコミは、民主党を励ますべきであって、たんにこきおろすとしたら、その見識が疑われて当然だと思います。
 最後に一言書いておくと、小沢は、吉田、池田、佐藤、田中、橋本と続く保守本流の流れをくむ経世会です。鳩山、福田、小泉、安倍、福田という右翼の清和会とは一線を画する存在です。日本の場合は、右翼の方が米軍従属を志向するんですよね。日本独自の立場にこだわったのはむしろ、保守本流経世会だった。
 そして、その小沢が、いま旧社会党系議員と組んで、社会民主主義的政策を、本当に遅ればせながら日本で実行しようとしている。清和会の議員には絶対にできないことです。そして、小沢が力をもつことをファシズムだとか言ってマスコミは批判しますが、幹事長なんだから力があって当たり前です。その力を何に使うのかこそ僕らが見る必要があるもので、今のところその使い方は間違っていないわけですから、マスコミの非難は当たらないと思います。ま、こんなこと、書くまでもないのですが。