『歴史学事典−戦争と外交』第7巻(弘文堂・1999)歴史学事典〈7〉戦争と外交作者: 加藤友康,樺山紘一,岸本美緒,佐藤次高,山本博文,尾形勇,川北稔,黒田日出男,南塚信吾出版社/メーカー: 弘文堂発売日: 1999/12メディア: 単行本この商品を含むブログ (1件) を見る

このブログのコメント欄で、ある人とレスを交換しているのだが、歴史的事実に関する共通認識が取れていないことを痛感した。
こうした問題については、ウィキペディアを基準にして、事実の概要をつかみ、ウィキペディアにおいて議論がある場合、歴史学的な文献によって学術的検討を経た定義を知る必要がある。
そんなわけで、上記事典を入手した。歴史学者の間で標準的な大事典の1つだ。
これによって、ユダヤ人絶滅政策、南京事件従軍慰安婦の項目を参照することができた。
ウィキで議論ありとされる項目は、3つのうち終わりの2つ、ここを参照した。
ユダヤ人虐殺政策については、ウィキでは、その歴史認定に疑問をつける意見を付記しているが、歴史学事典ではその項目の文末に「なおユダヤ人殺害の事実を否定し、あるいはこれを過小評価しようとするいわゆる修正主義者の議論は、論争と呼ぶに値しない。」と記されている。つまり、学会ではそういう認識だし、その意味で一部の人間がこの問題で大騒ぎしようと考慮に値しないというべきだろう。そして、ウィキで反論を併記すること自体、逆に議論を不正確にするおそれもあるという否定的見解を感じ。
そして、こうした風説によって議論が紛糾することは、その当事者が学術文献を参照しようとしない知的怠慢をしている限り、無視すべきだという結論に達したわけだ。もしくは、注意を喚起するとかである。
実際、南京事件に関しては、大学入試統一試験において出題され、思想的選別であるとして抗議し、司法に持ち込んだ受験生もいたという。でも、これは思想の問題というよりも、科学的歴史分析における事実の問題だから、彼らの主張は的外れだろう。裁判が本当に実現するのなら結果が楽しみだが、それにしても、風説の害悪を示して余りある気がする。
そして、こうした学問的背景を知りながら、あえて、「日本軍による南京虐殺はなかった」「従軍慰安婦の強制連行はなかった」といった風説を流し続けるとしたら、それは極めて悪質な、自己の目的を達成するための悪質な政治的言動・煽動となる。