小沼賢司『ユートピアの鎖−全体主義の歴史経験』ユートピアの鎖―全体主義の歴史経験作者: 小沼堅司出版社/メーカー: 成文社発売日: 2003/10/01メディア: 単行本この商品を含むブログ (1件) を見る

 小沼賢司『ユートピアの鎖−全体主義の歴史経験』(成分社・2003、 ISBN:4915730417)。この本は、いわゆる社会主義国の独裁体制を、スターリン時代と、その死後の後期全体主義体制とに分け、その成立と維持の課程を分析し、ジョージ・オーウェルアンドレ・ジイドなどの西欧知識人がどうその現象と対決したかを描いたものです。
 スターリン主義レーニンにさかのぼり、レーニンマルクスにさかのぼって、その全体主義の発生のメカニズムと理論を分析しなければならないというのは、現在の左翼の共通認識なので、この本の論の進め方は好感がもてました。
 しかし、この本でも紹介されているように、オーエルは以前「この本には、なぜ俺達アメリカ人がソ連に水爆を落とさなきゃならないかが書いてある」と自分の著作『1984年』を、売り子に薦められたことがあるという事態に対して、小沼さんはどう返答するのか興味を持ちました。ソ連、東欧と違って、東アジアには中国もあれば北朝鮮もある。そして、彼らは未だ民主的な政府を持っていない。そうした冷戦の残存が、現在の日本の有権者の政策選択に影を落としていることは事実だからです。小沼さんには編者として関わった『いま戦争と平和を考える』(国際書院・1992、ISBN:4906319327)があるので、それも読んでみたくなりました。