藤原帰一『「正しい戦争」は本当にあるのか−論理としての平和主義』「正しい戦争」は本当にあるのか作者: 藤原帰一出版社/メーカー: ロッキング・オン発売日: 2003/12/03メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 47回この商品を含むブログ (48件) を見る

 藤原帰一『「正しい戦争」は本当にあるのか−論理としての平和主義』(ロッキング・オン・2003、ISBN:4860520319)。この本は前から気になっていたのですが、はてなダイアリーid:toni-tojadoさんが読まれていたのを見て、自分も買いました。
 この本の一番の収穫は、「正しい戦争」と言われ始めた背景が、米ソ冷戦が終了し、アメリカの単独の軍事的優位が確立し、アメリカ政府によって侵略戦争可能になった冷戦後の現在にあることが指摘されていたことでした。つまり、米ソの緊張関係があった時代には、正しかろうが正しくなかろうが、戦争そのものを徹底的に遂行すること自体が困難だった。しかし、今、アメリカにとってはそれが可能になったことをこの本の著者は指摘しています。だから「正しい戦争」という論の立て方自体が可能になったというわけでした。
 そして、藤原さんは「戦争は、悪い奴だからやっつけろではなく、起こりそうな所で最初の小さな紛争の芽を国連の力で仲介して矛を収めさせることが重要である」と結論します。
 この結論に異論はないのだけれど、日本の役割について藤原さんは明確に答えていないように思いました。つまり、小泉自民党流の「どこまでもアメリカについていって、必要とあらば自衛隊員の命も差し出しましょう」という態度と、民主党小沢の主張する「国連軍に参加して国連の錦の御旗の下で自衛隊に戦争させましょう」という二つの態度を、どう僕らは評価すべきか?という問題です。小泉の態度に対しては、明確に藤原さんは反対の態度です。では、小沢についてはどうか? このへんがあいまいなんですよね。「国連軍への参加は国権の発動たる戦争ではない」みたいなことを小沢は言っているのですが、これはその説明自体論理矛盾だし、それゆえ小沢は9条の変更を主張しているわけです。明らかに専守防衛でもない。この小沢の態度に対して藤原さんの「論理的平和主義」が、どう答えるのか興味深いのですが、この本では、やはり結論からいえば、著者の藤原さんは答えずに逃げてしまっているように見えます。
 僕は、軍事分野で国連に協力する必要はないと考えます。警察行動であれば資金的に協力することはOKではないかと考えますが、自衛隊を出すとしたらPKO5原則にのっとってするべきだと思います。