夏目漱石「門」

福島第一原発事故関係URL
武田邦彦(中部大学)ホームページ
http://takedanet.com/
実現させよう原発国民投票
http://kokumintohyo.com/
板橋区子どもを被曝から守る会
http://itabashi-kodomo.jimdo.com/
グリンピース
http://www.greenpeace.org/japan/ja/
都健康安全研究センター
都内の環境放射線測定結果 測定場所:東京都新宿区百人町
http://ftp.jaist.ac.jp/pub/emergency/monitoring.tokyo-eiken.go.jp/monitoring/
東京都ホームページ
http://www.metro.tokyo.jp/

夏目漱石全集〈6〉 (ちくま文庫)

夏目漱石全集〈6〉 (ちくま文庫)

 夏目漱石『門』を読みました。これは以前読んでこのブログにも感想を書いた『三四郎』『それから』に続く初期三部作の最後の作品と呼ばれるもので、以前から読みたかったのですが、青空文庫のビュワーを入手したので読むことができたものです。青空文庫の底本は「夏目漱石全集6」ちくま文庫筑摩書房・1988)です。
 つい先日、アンドロイドスマホに携帯から乗り換えて、それ以降ネットストリーミングでロンドンのクラシックFM番組ばかり聴いていたのですが、『青空読手』というアンドロイドアプリ(無料)を手に入れてから、文庫本代わりに使うという新しい使い方に目覚めました。もちろんPCでも読めるのですが、開けばすぐ読めるスマホ(シャープの二つ折りスマホ、007SH)の便利さは比較になりません。
 ソフトバンクのウルトラワイファイも契約しているので、現在のモバイル環境はこのスマホとポケットワイファイ、そして入力用のバイオP(VGN-70H)の3台持ちです。それと電源ケーブルですね。
 ともかく、「青空読手」で読む『門』は5,6箇所、表示できない漢字があった(それでも振り仮名は振ってあった)ほかは、ほぼ問題なく読むことができました。アプリ製作者、『門』の入力・校正者に感謝です。
 さて、作品の感想を書きます。『三四郎』が都会に出たばかりの大学生の開け行く未来と、未来がいまだ定まらぬがゆえの漂泊感を特徴とするのなら、『それから』は「高等遊民」を気取る大学を出て数年たった若者の、意外と脆弱な自我を描いた作品でした。そしてこの『門』とは、大学を中退して結婚した主人公とその妻の5,6年後の話です。
 一番最初に目に付いたのは、この夫婦の世間を避けるように暮らす暮らしぶりの静謐さと美しさでした。漱石の文書は気取ったところがなくて、読んでいくうちにその雰囲気が伝わるという美しいものです。宗教や哲学といったものを持たず、世間からもできる限り身を引いて生きる夫婦は、必然的にお互いを楕円における二つの焦点とするような閉ざされた世界に生きることになります。それは互いにとってお互いに生きるうえで不可欠な存在であるような閉ざされてはいても、美しく幸福な世界です。東洋的な中庸の哲学すら感じる世界でした。
 後半における主人公の苦悩とは、そうしたお互いを欠くべからざる存在として考えるがゆえに、その生活を崩壊させるべく外部から来る危機に対する「予期不安」です。神経症的なものであると同時に実存的な悩みでもあります。実際主人公は神経衰弱を持病としています。それゆえ主人公は問題の解決を目指して禅宗の寺に入ってもみるのですが、解決策を得ることはできません。しかし家に戻った後、裏に住む大家でもある坂井の言葉を聞きます。「近くの川では春になるとたくさんのかえるが生まれる。それを通りかかりの小僧とか暇人が殺して歩くので、殺された夫婦は無数になる。だから自分の友人のように銀婚式を祝えることはめでたいことである」彼はこう言って、引き出物の菓子を主人公に差し出します。「君もあやかりたまえ」
 この感想を書くためにWikiの作品案内(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%8F%E7%9B%AE%E6%BC%B1%E7%9F%B3、こちらから作品リンクに飛んでください)も参照しました。漱石が体調を崩し、そのため作品が中途半端になっているとの評価が書かれていました。確かに、友人から略奪した妻との生活がそうした情熱にあわず静かで穏やかな点、略奪の経緯が省略されている点など、いろいろ考えさせられる点はありましたが、略奪したからその後の生活も情熱的になるかと言うとそうでもない気もします。 
 今僕はアリストテレス『二コマコス倫理学岩波文庫岩波書店・1971、1973)を読んでいるのですが、これはサンデルの講義『これから正義の話をしよう』をTVで見たせいです。何が正しいのかを知りたいと思って読んでいるのですが、アリストテレスもこの本の中で言うように、幸福とは正しさや正義を考える上で重要なモチベーションとなるものです。文学と哲学の違いはありますが、この本も読みながら、幸せとは何かを考えていきたいと思っています。