菅継続への最適解

福島第一原発事故関係URL(放射性物質被曝問題が未解決なので、いましばらくURL掲載を続けます)
武田邦彦(中部大学)ホームページ
http://takedanet.com/
都健康安全研究センター
都内の環境放射線測定結果 測定場所:東京都新宿区百人町
http://ftp.jaist.ac.jp/pub/emergency/monitoring.tokyo-eiken.go.jp/monitoring/
東京都ホームページ
http://www.metro.tokyo.jp/

枯枝に
ぬしが名を 刻んだら
めでたし や
枯木に 花が
ひらいたよ。
−-コインブラ地方の古謡
藤村信『西欧左翼のルネサンス−パリ通信』(1977・岩波書店)28頁から引用

 以前引用したブログ『世に倦む日日』(http://critic5.exblog.jp/)の2011年7月7日の記事「浜岡に続いて玄海の陣でも勝利 - 今夏の再稼働阻止」を読んで、現在の政治状況が少し明確になりました。
 菅は自らの延命のための正解を手にしたように思えます。それは脱原発です。これを掲げた時、すべての日本に住むひとびとは彼を支持する。たとえそれが彼の延命のためであったとしてもです。その意味で、以前コメントしてくれたトロスキーさんやチョンボさん、そして僕が喧嘩した友人も、結果的に正しかったことになります。
 これは前回書いた「ポスト菅の条件」を一歩進めれば、当然導ける解でした。つまり、現在菅を引きずり降ろそうとしている連中は、原子力村の官僚・学者・マスコミと一体となって原発再稼働を目的としているのだから、そういった連中と比べれば菅はまだましとなるわけです。鳩山、小沢は官僚と一体かどうか不明ですが、かといって脱原発を明確にしているわけではありません。
 『世に倦む日日』のこの記事によれば、8−9月にも決まろうとする原子力村関連の4500億円の概算要求に対して、ストレステストのために停止中の原発の再稼働が延期されれば、官僚は大打撃を受ける。そのため菅の早期退陣を画策した。しかし、菅がストレステストを理由に再稼働の延長を決めれば、その予算要求を通すことは不可能となる、という構図だそうです。
 自民にしろ公明にしろ、民主党執行部という菅降ろしの連中も、脱原発という有権者の声を無視することはできない。だから彼らの主張は、菅に対する不正献金等の個人攻撃に終始する。原発問題や送電と発電の分離を国会で主張したみんなの党と比べれば、腰が引けているのは明らかです。それは、すべて脱原発という世論のためだと考えられます。
 少し歴史を戻せば、菅の現在の立場を説明できると思います。
 菅は仙谷と組んで、日米同盟とその利権への侵害から身を守ろうとした官僚・マスコミと協調して、鳩山=小沢降ろしを画策し、それに成功した。この時、菅への交代によって党のイメージアップを図り、参院選での勝利を目指した小沢、鳩山の意図は、菅の消費税発言によって裏切られ、参院選での民主党敗北となった。菅にすれば官僚を抱き込んだ結果として、敗北への道は必然だった。
 そして迎えた昨年9月の民主党党首選においても、官僚・マスコミと共同して小沢を叩き、民主党代表の立場を維持した。
 そして、今年3月11日の震災以後、菅は財政規律重視の官僚の言に従い棄民政策を続けたため、有権者の不評を買い、菅降ろしが始まった。現民主党執行部にしてみれば、官僚との協調は既定路線なのだから、菅を降ろしても別の候補を立てれば、路線を変更する必要はない。
 しかし、ここで民主党執行部が読み間違えたのは、脱原発に対する有権者の支持があまりに大きいことだった。それは日々放射能によって生活が脅かされている人々にとって、当然の反応である。
 だから菅にとって、震災以後のすべての失政を補って余りあるのが、脱原発への政策転換となるのである。なぜなら、国民は、震災以後の官僚、マスコミ、そして政府自身の二枚舌に辟易しているし、まったく彼らの言を信じなくなったからである。そして、官僚が菅から離れ、菅降ろしを画策するのなら、少なくともその主勢力である原子力村の連中を切るのが一番の良策となる。こえれは、浜岡原発を停止した時点からも、より進んだ状況と言える。
 菅は、鳩山=小沢降ろしの際に味方だった官僚から見限られ、同時に官僚と一体化している民主党執行部(仙谷、岡田、野田、前原)からも引退の勧告を受けている。そして、彼に残された手は、国民の支持だけになったというわけです。
 ストレステストを再稼働の条件にするかしないかは、11日中に発表するとのことですが、もしこれを条件にしなければ、菅は進退きわまるのではないかと予想されます。なぜなら、脱原発は菅が唯一持っている切り札だからです。これを切れば、総選挙での大勝もかなう。しかし、もし切らなければ、そのときは、菅降ろしの連中と政策的に差異はなくなり、辞任しか残された道はないからです。