原発問題

 今日の『パックインジャーナル』で印象深かったのは、3・11まで反原発を唱えると「お前は赤か」と言われた。しかし、これ以降、左右を問わない問題となり、まさに生存権の問題となった。TVも変わりつつある。これからは普通に反原発派の評論家が推進派と同じように登場してくるだろうという発言でした。
 反原発デモで日章旗を振っていた人がいた。こんな光景はこれまでありえなかったし、それこそが、原発問題がイデオロギーではなくもはや生存権の問題になりつつあることの証拠と言えるかもしれません。
 冒頭に掲げた武田氏のホームページを読めば、僕がここで再説する必要はないのですが、少しだけ書いてみたいと思います。
 現在の菅政権は狂気の政策を行っています。原子力安全に関する法規を全く無視して福島原発事故関連の政策を行い、通常ならば1年半の懲役になる犯罪を犯しているのが現在の内閣です。そして、それを新聞も、国会も取り上げない。だから、逆に市民はその罪に気づかないといった有様です。
 年間1ミリシーベルト(自然放射能を除く)を超える被曝の可能性あるエリアを立ち入り制限しなければならないというのその法律に書いてあることです。どうしても必要な人以外は立ち入りできないとする措置です。それは、人体にがんなどの影響が増えるからです。
 しかし文部科学省のしていることは児童をそれ以上のところである学校に通わせ、内閣の指導は市民に基準値以下とはいえ放射能汚染がある食料を食べさせ、水を飲ませるという政策でした。
 文部省が特に犯罪的なのは、放射性物質の汚染された校庭表土の引き取りを東電に強制しないという点です。放射性廃棄物の出所は、はっきりしている。福島第一原子力発電所です。だから汚染された物質はすべて福島第一発電所が引き取るのが理の当然です。
 そうした発想ができないのは、原発放射性廃棄物の最終処理場が決まっていないということに捕らわれた官僚的発想によるのでしょう。しかし、その結論が、低レベルとはいえ校庭の地下に放射性廃棄物保管所を作るといった、ありえない方針であるとしたら狂気の沙汰です。
 20キロの立ち入り禁止エリアが設定され、そのエリアの住民に損害賠償が支払われるのなら、福島第一原発こそ、放射性廃棄物の集積所に最もふさわしい場所です。そしてその汚染除染の責任は東電にあります。除染できないのなら、完全に放射性物質の危険性が無くなるまで管理するのが東電の責任です。
 成人以上に放射性物質から出る放射線に敏感な子供の過ごす場所の地下で、放射性廃棄物管理するなど言語道断です。もし教師や親がそれに同意するのなら、それは、将来の危険から目をそらし夢に生きることを意味します。夢は現実の発がんによって必ず打ち砕かれます。3年後、5年後にそれを先延ばしするなら、それは単なる逃げにすぎません。現実は必ず現れるからです。そして、そんな学校に将来も自分の子供を通わせたいと思う親はいるのでしょうか。否です。
 また、校庭の表土を直接地下に埋めるのも同様に危険な指導です。それは地下水への放射性物質の流出をもたらし、より汚染地域を広げることを意味するからです。
 こうした指導は、福島をより汚染されていない場所に戻す最後のチャンスを、みすみす逃すことです。こんな小学生でもわかる事実を、マスコミは誰も報道しようとしない。これこそエーリッヒ・フロムの「自由からの逃走」と呼ぶべき事態なのだと思います。マインド・コントロールといってもいい。なぜなら、これこそ将来を予測することが怖すぎて、まともに考えるという重荷を誰も背負おうとしないという事態だからです。
 校庭だけでなく農業用地も同様です。梅雨前の表土の取り去り、東電の引き取りこそ唯一の解決策であり、農業の国・福島を回復するただ一つの方法です。
 そして、農産物と海産物の完全な放射能管理が為し得て初めて食の安全が保たれます。国内であれば政府基準以下の放射性物質に汚染された食物を被災地支援という名目で食べようとする奇特な市民もいるでしょう。しかし、海外からすれば、片方に放射性物質で汚染されていない食物があるのだから、あえて汚染された物を食べようとする方が例外となる。これは風評ではなく、現実の危険性だからです。
 品質管理が徹底していたからこそ、これまで日本の野菜や食物は海外でブランドを持つことができました。しかし、それを放棄したら、このブランドはぶち壊され輸出など夢のまた夢となる。それは、農業・漁業にとどまらず、そうした食材を使う国内の観光業にも影響する問題です。
 つまり、これらの問題に対する解決策は、食材に関する放射線管理を徹底的に行い、政府基準以下の食材であれば、その汚染程度をベクレル単位で明示するしか方法がないということです。放射性物質の汚染が加算的に評価されることを考えれば、これはおおげさな問題ではありません。このままでは海外で相手にされないというリアルな問題です。これを行うか、輸出を断念するかといった二つに一つの問題です。
 汚染された肉牛、乳牛の問題も同様です。今これらの牛を、全国各地に避難させその出身を隠そうとする動きがある。もしこれを行ったら、福島産の牛肉、原乳だけでなく、日本全体のこうした食物の品質が疑われる結果となる。つまり、外国の輸入基準に合わせることが、ひいては日本の消費者全体を守ることになることを忘れてはならないと思います。
 そして、最後に、原発事故保障の枠組みに関して書きたいと思います。政府案は新聞等で報道されるとおりです。そして不足分は利用者に対する電気料金の値上げでまかなうという方針だそうです。ふざけるなと言いたい。
 東電は保安院原子力安全委員会の監督のもとで原子力発電所を作った。もし、それが地震津波で壊れたら、その責任は建築に許可を与えたこうした政府委員会にあります。本来東電はこのことを主張していいはずです。しかし、東電はそれをしない。なぜなら、東電も政府系委員会も共犯関係にあるからだと思います。
 実態は、保安院・安全委員会は東電の報告を承認するだけであった。東電は甘い基準で、地震で必ず壊れ、地域的に送電網が壊滅する状況になれば、必ず爆発という事故を起こす原発を作り続けた。
 だから、政府から東電に出す条件は明白です。「東電の資産は保障する。その代わりに政府に対する批判はしないでくれ」という裏取引です。これがいままさに行なわれているのだと思います。
 この裏取引だけでも、明白な犯罪行為です。
 つまり、市民は電力料金の値上げや政府支援を承認する前にすることがあります。東電の送電網を他社に売却し、それを事故保障の資金とすることを要求すべきであるということです。これで完全に賄えるはずです。もしそれでも賄えないのなら、東電自体を政府もしくは他の民間会社に売却すべきです。そして保障すべきなのです。
 これには二重のメリットがあります。東電は送電網の独占管理を通じて、反原発につながる分散型発電をことごとく妨害してきた。原発のほうが利益を上げられるからです。その構造を破壊することにつながる。そして利益を得るのは、今度は東電ではなく、地域の中小企業、地域社会です。
 こうした手段があるにもかかわらず、国債という市民に負担を強いる手段で賠償しようとする菅内閣はまさに市民の敵というべきです。つまり、方針が変わらないのなら倒閣すべきです。
 原発政策全般に関して言えば、国内の原発は実際に現在ほとんどが止まっているのだから、即時全廃すべきです。代替電力元としては火力発電所を作ればいい。それで電力は賄えます。専門家もそう言っている。そして原発交付金を全てやめ、その原資で自然力エネルギーを開発・普及すればいい。
 こうした手段を取れないのは、既存の東電を中心とした電力独占企業と官僚・政治家の既得権益をただひたすら、福島の市民・児童の発がんによる死や日本の農業・漁業ブランド犠牲の上に守ろうとする、思考停止にあります。マスコミも東電の広告料金を守るためにこの思考停止に同調している。
 ここで提案なのですが、東電は独占企業なのだから広告を打つ必要はない。競争がないからです。広告予算はすべてカットし賠償に使うべきです。
 これらが実行された先には、新しい電力供給システムにもとづく安全で先進的で海外競争力のある自然力発電という日本の産業の未来があります。そして、もし実行されなければ、海外から見向きもされない三流国、四流国への転落が待っているだけです。
 実際、この間の政府の情報統制、ありえない政策のオンパレードは、チェルノブイリ原発事故当時の旧ソ連を彷彿させるものです。そしてチェルノブイリ原発事故の後、旧ソ連は解体した。日本の未来をどちらにするのかは、意識ある、そしてまともな判断力・倫理感のある有権者、識者の行動にかかっていると思います。