本当の敵は、アメリカ政府とその傀儡

日本政治の混迷
 日本の政治の閉塞状況を見て、やりきれない気分になっていたのですが、どうやら本当の敵が見えてきたように思います。
 まず、日本政治の閉塞状況の定義を明確にする必要があります。
 ひとつは、正当な理由に基づく小沢氏の政治資金の記載時期のずれが、あたかも違法な大問題であるかのように語られ、検察の脅しによって引き出されたことが明らかになった石川議員の証言をもとに、検察審査会によって小沢氏が強制起訴されようとする現状。そして、次に、そうした事情を十分に理解しているにもかかわらず、菅首相と岡田民主党幹事長が小沢氏に離党勧告を出そうとする状況です。
 第3に、2009マニュフェスト(=公約)破り状況になっている、公務員の天下り全廃の中止、公益法人に代表される天下り先・無駄な税金の支出先の廃止の中止といった菅内閣の政策。
 第4に、一部輸出大企業だけの利益になっても、国内経済と農業に壊滅的打撃を与えるTPPへの菅内閣の積極的な参加姿勢。
 第5に、いっこうに進展しない辺野古への基地移転撤回、沖縄をはじめとする在日米軍基地の地位協定の平等化です。欧州では、すでに地位協定の平等化は行われているのですから、菅内閣の無策は明白です。そして、思いやり予算の5年間の支払い約束といった自民党時代以上の対米従属。

Wikiリークス発表の米政府公電
 そんな状況の中、これらの問題の真の原因を説明するWikiriリークスの報道がありました。
 大新聞は全く取り上げませんでしたが、『日刊ゲンダイ』がとりあげたもので、岡田幹事長の菅首相への接近を要請する米国務省の意向を内容としています。
 つまり、背景を説明すると、菅首相は自らの政権の延命だけを志向している。彼が見ているのは、米国との対等な関係を目指し、2009マニュフェストの実現を目指した鳩山内閣崩壊の姿です。

鳩山内閣の崩壊とその真の原因
 2009マニュフェストへの有権者の支持を受けた鳩山内閣がめざしたのは、沖縄の米軍基地問題を解決し、公共団体へ政府予算が支出されるうちに、その金が官僚と天下り先の大企業のふところへと消えてしまう現状を正し、必要とされる人に直接政府資金を配布し、それによって経済的需要と生み出そうとする政策です。高速道路の無料化も同様の趣旨のものです。
 そして、在日米軍基地問題を解決するには、米政府べったりの一極的外交姿勢では不可能であり、中国カードを使って米国をけん制することが不可欠です。
 2009マニュフェストに示された「コンクリートから人へ」の政策は、国内需要を作り出すと同時に、スリムな財政支出を作り出すと同時に、中央官僚への統制を強化し、小さな政府ではなく「働く政府」を作り出すために必修のものです。
 そして、それらの政策を実現する為には、自らの既得権益の擁護のために世論を誘導するマスコミ各社ではない、国民の、視聴者の、読者の立場に立った独立した報道をする報道機関が必要とされます。これは既得権益のために嘘ですら平気で報道するマスコミを変えることを意味しており、大手新聞社からの報道に従属する大手テレビ局系列を解き放つことを意味します。
 これらはすべて、対米従属の日本国家、米国に無駄であっても金を貢ぐ日本政府、これまでどおりに基地も使用するし、その予算も支払う日本政府を求める米国政府の利害に抵触することです。
 だから、マスコミ、高級国家官僚、一部大企業、鳩山=小沢政権をつぶすことによって与党内の権力闘争に勝とうとした菅=仙石一派の思惑は、こうした米国の利益に追随することによって、鳩山と小沢と2009マニュフェストを葬り去ることに協力しました。
 財政危機を前にして国民に税負担を求めるにしても、財政危機を生み出した構造そのものを解消することが前提となります。大量出血している患者の止血をせずに、輸血によってそれを解決しようとしても、それは不可能だからです。それを具体的な公約としたのが鳩山首相の「4年間は増税しない」という約束だったわけです。その間に、徹底的な財政の無駄の削除が行なわれ、それに国民が納得した時はじめて、社会保障に関する増税の議論ができるというのが、鳩山や小沢の思惑でした。
 しかし、それは、政=財=官=報、そしてアメリカ政府といった守旧派の鉄の結束を甘く見過ぎた。鳩山はまず、局長以上の職員を特別職にする法案を通すべきでした。もしくは、彼らに日付を空欄にした辞職願を出させるべきでした。特別な法案がなくても、公務員が上司である政治家の指示通り動かないなら、それは職務規定違反であり、辞職することになります。こうして官僚の統制を確保したうえで、対米交渉に臨むべきでした。これまでの対米従属外交を転換するには、国内の統制がなければ不可能です。
 天下りの廃止、無駄な公益法人の廃止、無駄な事業の廃止もすべて、こうした官僚統制がなければ実現できません。
 マスコミの与党攻撃は、攻撃すべき証拠があるからではなく、自らの既得権益、TV局であれば携帯会社と比べて不当に低い電波使用料であり、新聞社であれば、株式持ち合いによるTV局との共同世論操作であり、総務省との癒着です。
 官僚統制があれば、総務省との癒着は切れます。しかし、2番目のクロスオーナーシップによる世論支配こそマスコミの力の源泉であり、彼らにとって独立したメディアの出現は、これまでの寡占手世論支配という力の源泉を崩壊させるものです。ですから、クロスオーナーシップの禁止を目指す民主党は、マスコミ各社にとって絶対に崩壊させなければならない敵と映ります。電波使用料は、不当に低いがゆえに、絶対に手放せないものです。この抵抗を破壊する為には、原口総務大臣が主張していたように、上記の2法案、つまりクロスオーナーシップの禁止法案と電波帯域の競売制法案を、官僚統制ができた次に議会に通す必要がありました。
 ここまでできてはじめて、米国政府との戦いが可能となります。そして在日米軍基地に関する日米地位協定の改定や、米軍基地の縮小は、官僚統制と、独立したメディアの創設抜きに不可能なことです。それは、この1年半の間に証明されたことです。
 つまり、ここで暗躍するのは、アメリカ帝国主義政府、そしてそれに同調することによって、国民の利益を守るのではなく、むしろ国民の利益・生命を犠牲にすることで自らの既得権益を守ろうとする守旧派の財官報といった腐敗した連中であったこと、そして、恥知らずにも自らの権力闘争のために米国の力を借りようとした、菅、仙谷、枝野、前原、岡田といった民主党腐敗政治家であったことが示されると思います。

小沢氏無罪の重要性
 かつて、強大な力を持つロシアの圧力に屈しなかった大津事件という判決があります。これはロシア皇太子に切りかかった巡査を死刑にしろという圧力に明治時代の裁判官が抵抗し、傷害罪の通常の規定を適用した歴史的に有名な判決です。
 その意味で、小沢裁判とは、当然無罪になるべき判決です。この法的条理を無視し、微罪でも有罪にし、政界から小沢氏を追放しようとするのが、アメリカの圧力です。だから、日本の独立と国民の利益を考えると、この裁判は大津事件以上に重要な裁判となります。
 もっとも、裁判を開始できるのかも怪しい裁判です。だって検察審議会が起訴相当とした理由は、石川議員の証言であり、その証言は検察官による不法な脅しによって作られたことが録音テープで証明され、検察はその部分の証拠としての調書提出を撤回しているのですから。1回目の検察審査会の起訴相当理由に新しい理由を付け加えた第2回の検察審査会決議自体法的に不当なものですが、他にも決議文の根拠はすでに崩壊しているからです。
 ですので、裁判の開始を含めて、もし開始されるのならその結末こそ、日本政府が対米従属を断ち切り、真の独立国家として、米国や一部特権階級のためではなく、真に国民のための政府たりうるかが問われる、重大な裁判となります。