仙谷後の日本政治

 今日発売の『日刊ゲンダイ』は面白い内容でした。週明けにも閣僚の連鎖辞任が起こり、仙谷もそれで失脚するかもしれないという内容です。菅はすでに内心では、野党からの仙谷辞任要求を待っていると伝えています。その後は、辞めさせた大臣や官房長官、党幹事長の代わりに、小沢や小沢派議員を据えて民主党挙党態勢を組むというシナリオです。
 実際、このままいけば民主党の政権からの転落は避けられず、菅との心中を恐れる仙谷は前原を後釜に据えることによって、この危機を乗り切ろうとしていると『日刊ゲンダイ』は伝えます。
 しかしです。こうした首相の挿げ替えといった小手先の変化で国民の不信を払拭できるかというと、その答えはNOです。なぜなら、菅の指導力不足が現在の内閣不信任についての世論調査第1位の理由だとしても、その実際の内容は、菅内閣の政策に対する失望にあるからです。政策不信の第1位は不況対策です。
 こうした世論を変えるためには政策を劇的に変更するしかない。そしてその期待に応えられるのは、スーパーライトの前原ではないからです。
 いまさら中国に強く出るために軍備を強化したり、自衛隊などに対する機密法制を強化したり、極刑を死刑とするスパイ防止法を制定したりしても、実際には、戦争という選択肢がありえないのだから、机上の空論です。
 一部の現実を見ないオッサンやネット右翼を満足させることはできても、有権者の大半を納得させる政策になりえません。
 なぜなら、そこには景気対策がまったくないからです。雇用対策もない。税収の減少に対する対策もない(これは、消費税増税を選択肢にしないという立場です)。
 つまり、前原のような戦略的思考すらできないアホに解決策は出せない。出せたとしても、自衛隊を軍隊化するというおもちゃの兵ごっこに類する小児的な改憲策動くらいでしょう。それこそ、解決の方法を見失い、あさっての方角を向いた政策です。
 これは、教育基本法に「愛国」を入れれば日本はよくなるといったたぐいの、虚弱な元首相・安倍レベルの劣化した発想です。
 これらのことを理解し、同時に、前原に寝首を掻かれることを嫌う菅の心理は、もう明らかでしょう。
 つまり、仙谷を排除した後の菅首相は、小沢と組むしかない。
 そしてその時やっと、検察とにマスコミよって滅茶苦茶にされた日本が、再び長期的政治目標をもち、不況や経済問題に取り組む土台ができるのだと思います。そうした時代が、やっと、長く待たされた末に、やって来るのだと思います。選挙民の意思は、すでに2009年夏に出されていたのですから。

 1匹狼なのに、クリーンなイメージを利用されて党幹事長に就いた岡田は、人脈のなさのために何も党務を実行できていません。
 頼るべき副幹事長の枝野は、「中国に進出している日本企業は、何かあったとき日本政府の援助を期待するな」みたいな、現状認識のないアホ発言を繰り返します。
 日本の最大の輸出国が中国であり、貿易黒字を出している相手も中国であること、現在と将来の日本経済にとって、韓国と並んで最も重要な国の1つが中国であることを全く理解しないアホぶりです。つまるところ、枝野にできるのは、仙谷と同じく、反小沢といった陰謀だけなのだから、それも当然かもしれません。しかしこうした連中に政治の重責を担わせることができないのも、同じように当然のことなのです。
 枝野の唯一のとりえであった事業仕分も、3回を重ねてほとんど効果がないことが明白になりました。一部政府情報を公開した側面は効果がありました。しかし、予算削減の面では無効だった。
 政治も外交も実力闘争です。それは民間企業の間の競争が実力闘争であるのと同じことです。未来を予測できないバカ経営者の企業は潰れます。同じことが、政府にも言えるのだと思います。
 つまり、菅はできるだけ早く仙谷を切り、小沢との、そして鳩山との、挙党態勢を組むことが必要です。
 少し前まではFTAAPを選挙のシングルイッシューにして、かつての小泉のように選挙に打って出るという選択肢がありました。でも、みんなもうこれを忘れてしまったし、いまさら消費税増税をシングルイッシューにすることもできない。消費税増税でやったら、負けることがわかり切ってているからです。
 仙谷は、世論調査で次の首相第1位である前原を据えようと思っている。でも、世論調査はかつてイタチ男こと舛添を1位にしていた。彼は今、どうしているのでしょうか? つまりは、有効な政策を中心に据えない限り長期政権は築けないことに、菅は早く気づべきなのだと思います。
 メモを読みながら、決して相手に目を合わすこともできない、まるで不良か、できの悪い学生のような菅首相の姿が世界に晒されたのがAPECでの日中会談でした。だから、本当は菅が辞めるのが一番なのです。小沢なら、少なくとあんな無様な姿をさらすことはなかった。相手の目を見ながら、ニコニコと笑いながら、必要な苦言を呈すこともできたと思います。それこそが政治家としての質の違いなのだと思います。そして、ここが重要ですが、そうした態度を取るためには、自分の内に長期政策といったしっかりとした政治的ビジョンをもっていることが必要なのです。
 つまるところ菅にはそれがない。仙谷や枝野にもない。岡田にもない。だから現在の内閣は低支持率からの回復が絶対に望めないのだと思います。