推定無罪を知らない愚かな検察審査員

ブログなどの反応
 ネットニュースで面白かったのは、牧野聖修国会対策委員長代理辞任のニュースでした(asahi.com)。牧野本人は上手いことやったとドヤ顔なのかもしれません。しかし、このニュースは、簡単に小沢を切れない民主党執行部の姿を如実に表しています。
 今日発売された『日刊ゲンダイ』の見出しは「謀略疑惑 小沢強制起訴」というものでした。この東京第5検察審査会の強制起訴に関しては、ネットでもいろいろな方がすでに論じていると思いますが、僕が一番心を打たれたのは、以下のブログです。

FC2ブログ世に倦む日日』「ゲーム感覚の起訴議決 - 「市民感覚」の無責任と若年審査員の裏」(2010年5月4日)
http://critic6.blog63.fc2.com/blog-entry-389.html

 このサイトは、時間がたつと有料になりますが、1か月分に320円払っても、今日の記事を読むためだけであっても払う価値のあるブログです
 ネット上にはさまざまなブロガーによるブログがあります。ツイッター全盛の時代にあっても、まとまった内容を記述し読ませるする手段として、ブログは生き残っているように思われます。
 そして、その中でも、有力ブロガーのサイトは、皆、頭がよくて文章もうまいものです。しかし「民衆に対する愛」がなければ、それらはすべて唾棄すべきものとなるのだと僕は思います。
 僕はサムペキンパー映画のファンだし、ハードボイルドが好きだから、愛という言葉はあまり使いたくないのですが、表現手段はともかく、その著者の根底に「人間界における弱肉強食を否定する「愛」があるのか否か」は、その著者の人間性を判断するうえで重要な基準になるのだと思います。
 僕らは獣のような人間を、自分の周りでさんざん見ている。だからこそ、知に溺れるのではなく、その人間がどうしてそう行動しているのかの見極めが必要になる。その意味で、『世に倦む日日』の田中さんは、論理構成の緻密さや文章のうまさをだけでなく、このような民衆に対する愛を兼ね備えた、稀有なブロガーだと思うのです。
 評論家然として、いかに多彩な資料を駆使したとしても、その著者の心の底に「弱い者は死んでしまえ!」といった思想が見え隠れるとしたら、そんなものは、到底受け入れられるものではありません。
 僕自身だって、ただの弱者なんですから。

民主党執行部の反応、それに対するリアクション
 ともかくTVのニュース番組にはドヤ顔の民主党議員が現われて、ヘラヘラと「小沢を民主党から辞任させろ」といった話をしていて、非常に不愉快です。
 ですので、僕は『日刊ゲンダイ』などを踏まえて少々、事態を説明したいと思います。
 いま民主党国会議員には、自公の政策を丸のみしてまで延命を図ろうとする、菅首相、仙谷官房長官、牧野副幹事長、前原外務大臣といった反小沢ラインの3バカトリオ+1にこのまま付いて行っていいのかという疑問が沸いているのだと思います。
 ましてやこの3バカトリオは検察審査会に検察事務局の裏側から手をまわし、「証拠はないけど疑わしいから裁判で決着をつけろ」という、およそ起訴の法的意味も重要性もわからない素人の理屈で、強制起訴という人権侵害を行った。こうした手法は、検察と検察審議会の政府による政治警察化であり、日本に住む人々にとっての法とか正義ではなく、民主党執行部自らの権力欲によって司法を動かそうとする姿勢です。
 こんな連中について行くことに対して、自らの政治家としての未来を賭けていいのかという疑問が、まじめな議員であれば必ず浮かぶはずです。そして、もしまじめな議員でなくても、自らの身の処し方を知る狡猾な議員であれば、当然、頭に浮かぶはずです。
 補正予算を野党との事前協議という名の談合によって乗り切ろうとした仙谷=菅の陰謀は、この強制起訴を受けて、野党から協力拒否の姿勢をひき出しました。
 かといってヘラヘラ顔の反小沢議員の意見をうのみにして、小沢に離党勧告を出せば、そもそも東京第5検察審議会の議決に疑問をもつ小沢派議員が党執行部から離反する。
 マスコミは党執行部を全面支援するかもしれませんが、今度は、視聴者がそれに従うとは限らない。視聴者は、裁判の経過に注視しているからです。
 こうした事態を受けてマスコミは「小沢氏の強制起訴を支持するか否か」という世論調査を行って、(世論調査の文面で誘導しながら)圧倒的な強制起訴への支持を引き出し、それを報道することによって、必ず、現民主党執行部有利の世論誘導を行うでしょう。これは小沢叩きの自己の報道を自己肯定するためでもあります。まるで泥縄です。そのとき民衆が冷静な判断力を持てるかは疑問です。
 しかし、裁判自体は冷静な法的手続きに基づいて行われる。その意味で、裁判所が公平に判断するならば、小沢勝訴は動かないと思います。
 小沢派にとって一番危険なのは裁判がダラダラと引き延ばされ長期戦に持ち込まれることですが、それすら、小沢氏の思想(=昨年の衆院選でのマニュフェストに戻れという思想)を体現する別の若手議員が、2年後の代表選に立候補すれば、小沢派勝利で決着するという高い可能性があります。
 逆に小沢氏に離党勧告を出して一気に小沢氏を葬ろうとすれば、起訴の要件を満たさない検察審議会の議決の不当性を確信する小沢派議員の離党を招き、その時点で政権は崩壊する。
 ましてや、検察審議会の依拠した調書は、議決後に明らかにされた捏造検察官といった連中が関与したものです。この議決時期すら、こうした点で疑惑のもたれるものです。
 つまり、まとめると、どちらにしても民主党執行部は自らの思惑を現できない状態におかれているように僕には思われます。
 小沢派議員からは「早く裁判をして決着をつけろ!」という声が聞かれます。これは起訴の不当性を確信するからです。かたや仙谷=菅が頼れるのはマスコミだけです。
 以前の日記にも書きましたが、御厨東大教授は朝日新聞のインタビューで「いま政治家がマスコミに頼るなら、それは戦前、政治家が軍に頼って、結局、軍に政党政治を破壊されたことの再現である」と指摘し、警告を発しています。
 ヘラヘラしてマスコミに登場する民主党議員は除外するとして、賢明な小沢派を含む民主党議員、そして誠意ある野党議員は、御厨さんの意見をどう聞くのでしょうか?
 僕は、地殻変動はすでに起きていると思わざるをえません。

靖国問題
 愛という言葉を書いたから、靖国神社の意見を支持するネット右翼に対しても、罵詈雑言ではなく、僕が日ごろ思っていることをまじめに書こうと思います。
 もしそんなに英霊を敬うのなら、英霊の唯一の代弁者を自称する靖国神社の意見だけでなく、生きて日本に戻った兵士たちの意見も聞くべきだと思います。
 そしてそうした意見は、厚生省が作った東京九段にある「しょうけい館」(http://www.shokeikan.go.jp/)を訪ねることで、知ることができます。僕も一度行きました。
 ここには学芸員がいてどんな質問にも答えてくれるし、資料図書館も併設しています。靖国神社の意見と傷ついて帰国した日本軍兵士の意見の両方をよく聴き比べて、自分の考えをまとめてみることをお勧めします。
 英霊を尊重する皆さんなら、必ず戦って生き残った帰国した兵士の意見も、誠実に聞くことができると思います。
 そのうえでの判断は、もちろん、皆さんにお任せしたいと思っています。