2010年民主党代表選挙結果のお詫びとその後の日本政治

 島本さん、ブログを読んできてくれた皆さん、ごめんなさい。2010年9月14日の民主党代表選挙は菅直人の勝利で終わりました。国会議員票200対206での小沢一郎氏の敗北でした。すべて私の読みの甘さの結果です。「選挙は箱を開けるまでわからない」というのが小沢氏の教えで、その通りの結末でした。
 少なくとも2011年度予算に関しては、小沢氏が掲げた政策は反映されず、官僚主導の恐ろしい予算になることが決定しました。
 ただ、今日発売された『日刊ゲンダイ』は、小沢氏の出番は引き延ばされただけで、小沢氏はその先を読んでいると論評しています。以下に紹介します。
 まず2011年度予算編成で菅民主党は自民案を丸のみする。その内容は昨年の民主党マニュフェストの全廃になる。とすれば、その時、民主党は存在意義を失うだろうという見立てです。その時、党内ナンバー2の小沢の出番が来る。もし菅が権力に固執して代表の座を降りないなら、小沢氏は来年3月までに配下50人を連れて脱党し、政権の主導権を握るだろうという読みです。
 僕の考える別のシナリオは、これは最悪のシナリオですが、仙谷が検察審査会をせっついて小沢起訴を行う。仙谷と国家官僚は司法官僚に手をまわして、小沢を迅速に地裁、高裁で有罪にする。そして最高裁の控訴棄却で、小沢氏を5年間の公民権停止し、小沢氏を政治的に葬る。その結果、指導者を失った今回の200人の小沢支持民主党議員は消滅する。菅政権は今後3年間続き、3年後の参院選挙で民主党は敗北、ここで別の菅派議員があたらしい民主党代表に選ばれるけれど、劣勢を回復できず、夏の衆院選挙で敗北。民主党は政権の座を降りることになる。こんなことも予想できます。
 さらに別のシナリオでは、菅が200人の議員の意向を無視できず、原口総務相を幹事長に据えることで挙党一致を目指すということも『日刊ゲンダイ』に書かれていました。
 しかし、これを小沢嫌いであり、本質的に自らの地位を脅かす最も手ごわい敵と考える仙谷官房長官は飲まない、と僕は思います。菅政権を実質的に動かしているのは仙谷だから、仙谷の意思が菅の意思となる。そのため、結局、菅再選で小沢排除政策は正しかったという結論になり、これまでどおり仙谷=菅=枝野体制を続けるというのが、僕には一番ありそうな予測に思えます。とすると、ここで『日刊ゲンダイ』の予想に戻ります。
 つまり、小沢氏が政治的に生き残れば、小沢氏が残りの民主党議員を引っ張ることになり、生き残っていなければ、原口総務大臣などの、小沢の遺志を継ぐ者が残りの民主党議員を引っ張るわけです。
 最悪のシナリオは、来年までに地裁、高裁の有罪判決を引き出すのは、さすがに容易でない気がしますから、いくら仙谷が本気で小沢を叩き潰したいと思ってもむずかしいかもしれません。ただ、政治は何があっても不思議ではないし、特に現在の「官僚報道複合体」(「官報複合体」という言葉はジャーナリスト上杉隆氏の言葉だそうです。『週刊アスキー』2010/9/28-10/5号25頁)ファシズム体制のもとでは、特にありそうなことです。なにしろTV・新聞はすべて小沢を悪としてしか報道していないのですから、今回の民主党選挙で、民主党サポーター・地方議員を洗脳したように、こんな迅速な判決もお手軽なものかもしれません。
 そのときには、小沢の遺志を継ぐ者は出てこないかもしれない。まさに最悪のシナリオというべきものです。
 官僚批判が一枚看板のみんなの党あたりが、自民、民主に不平な人々の支持を集めるかもしれません。しかし、その具体的な政策は竹中=小泉路線と同じ新自由主義だから、景気回復にはつながらない。むしろかつて欧州のように大量の移民を受け入れて、少子化の対策とするのかもしれません。その場合には、景気は持ち直すかもしれません。しかし、その時の日本は現在の欧州と同じ移民問題をかかえることになる。
 具体的には、失業問題を理由に移民を排除しようとするナショナル・フロント=右翼と人権団体が対立し、流血の惨事を引き起こし続ける構図です。しかし、これもかつてのヨーロッパを時間的に遅れて追いかける日本にとって、歴史の必然なのかもしれません。
 いま、少なくとも希望があるとすれば、勇気をもって小沢を支持した200人の民主党議員であり、小沢再選を支持したネット世論であろうと思います。
 正義は時に負ける時があるかもしれない。しかし、それでも正義は必ず勝たねばならない。なぜなら正義が負けた時に残るのはより深刻化した社会の矛盾であり、そのとき民衆の不満を受けとめられるのは正義だけだからです。
 それがかりに、官僚報道複合体ファシズムであれ、本当の政治的ファシズムであれ、ファシズムであったなら、次に来るのは民衆にとって、より悲惨な未来になります。