実録−メディア・ファシズム2010参院選
参院選挙の終わった7月12日月曜日、旧自民・公明政府の官房機密費から支援を受け続けたTV・新聞社首脳と自民党、公明党、みんなの党の幹部の会合が持たれた。
「いやー、やっと民主党・国民新党連合政府の過半数割れが実現しましたね。」
と谷垣自民党総裁が発言した。そして、こう続ける。
「これも、すべては、ここに出席されたTV局、新聞社各位のご活躍あってのことです。非常に、感謝、申し上げます」
「そりゃ我々だって、自分たちの利権にかかわる問題ですから、真剣になりますよ。」
とテレビ朝日首脳。
「ま、鳩山=小沢内閣をつぶした時点で勝負はついてましたがね。ただ、菅内閣の当初の支持率には胆をつぶした。これじゃ、民主党が過半数を取りかねない勢いでした。」
と朝日新聞首脳。
「それも、彼が、財務官僚の入れ知恵で消費税10%を打ち出してくれたおかげで、打ち消すことができました。」
その言葉を、渡辺みんなの党代表が引き継ぐ。
「民主党の選挙対策班は、結局、最後まで旧政府・財界・官界・マスコミの鉄の四角形に気づかないままでしたね。政財官報の結束を甘く見ていた。
ま、もっとも、菅首相や枝野幹事長にしたって、我々に恩義を感じていたわけだ。だって、何も証拠のない小沢を検察とマスコミが結束して追い落としたから、今の権力があるのですからね。我々の一番の敵が小沢だったにもかかわらず……」
「そうした刃が、自分たちに、すぐ向かってくることは気づいていたのでしょうかね。いや、気づいていても、自分たちなら裁き切れると思ったのかもしれない。つくづく、甘いですね。」
と、最高裁判所事務総局首脳が発言した。
「ま、これも検察局のご尽力のおかげです。」
「何っ言ってるんですか、検察と最高裁はいつも一緒じゃないですか? 同じ司法官僚ということで。」
と検察幹部が発言した。
「政治とその強制力を発揮する司法は、常に一体です。もちろん、政治といっても旧政府のことですけれどね。ハハハ。だって民主党についてても、全然いいことないから。」
「そう、あの取調過程の可視化に対して現職検事が朝日新聞で反論した時の反応は恐ろしかった。その反応は、これからも拷問続けるのか!?でしたから……」
「そんな反論、無視すればいいんですよ。だって、僕らマスコミは絶対取り上げませんから。マスコミが取り上げなければ、そんなものないことになるんですよ。
景気低迷で凶悪犯罪は増えるばかり。それをマスコミは警察発表どおり報道する。そんなもの見れば、容疑者の権利ばかり守って、被害者はどうなんだ!ってことになりますからね。うまく話をもっていったものだ。」
「本当は、ちゃんとした捜査をしてないから犯罪は増えるんですが。ハハハ。ま、それは、相身互い、スコミが警察の腐敗を追求しないでいてくれているから、現在の警察組織は安泰なのです。
民主党政権下で減少に転じた自殺者は増えるかもしれない。将来に希望がなければ自殺者は増えるばかりですからな。でも、死にたい奴は死ねばいい。棄民主義はわが国の伝統です。馬鹿はスイサイド・アタックさせて消せの精神ですよ。民主主義だけは、絶対に避けなけれがならない。」
と発言したのは、警視庁幹部だった。
「いくら犯罪が起きたって、国民が我慢すればいいんですよ。自殺だってそうです。そうすれば問題はないことになる。自殺者が無差別殺人に走ってくれればもっといい。その時こそ警察の予算増額です。別に何の対策もとらんのですから、丸もうけです。」
「その点は、マスコミも全面協力します。これからも警察批判は、絶対しない。」
とフジテレビ首脳が発言した。
「だって、我々は利益共同体ですから。国民は黙って働いて、物買って、税金納めればいんです。その結果、誰が死のうと知ったこっちゃない。この不況のご時世、求人の応募者はいくらでもいるんですから。ま、替えがきくわけですね。」
「それは我々も同感です。国民は、黙って死ぬまで働いて、税金を納め続ければいい。そんな環境で我々高級官僚はこれまで長い歴史を生きて来たんです。『税に対する対価をサービスでよこせ』なんて、とんでもない話だ。『農民は生かさず殺さず』が、江戸時代からの日本の流儀ですからな。伝統です。あ、今は納税者ですか。ハハハ。」
と財務官僚が発言した。
「こうなった以上、早いこと児童手当と高校授業料無償化を廃止しましょう。あんなばらまきに使う金は一銭もない。」
と谷垣。
「ついでに、年金改革もやめさせる。老後の貯金がなくて死ぬ奴は勝手に死なせてしまえばいい。そうすりゃ政府の支出も減るわけですから。これは、後期高齢者医療制度の精神でもありますしね。あ、そう、この制度も維持しなきゃ。」
「そりゃ簡単ですよ、だって政府は参院で過半数割れを起こしてる。我々が法案を通さなければいいだけなんだから。」
と渡辺。
「そうして余った金は貯めといて、政権奪還の暁には、これまで通り官僚と我々で山分けすればいい。なにしろ、地方は疲弊しています。我々を支持する建設団体は、今か今かと補助金を待ち望んでいまよ。あ、天下り官僚のみんなも一緒だね。ハハハ。」
ここで、建設官僚は、渡辺と谷垣にお酌をする。
「ま、どうぞ一杯。」
「我々が政権を奪還した暁には、公益法人を全部復活させます。いや、いっそのこともっと増やしちゃおう。そうすれば、もっと大手を振って天下りできますから。官僚と我々は、常に一枚岩だからね。」
と谷垣。
「でも、本当に視聴者は馬鹿ですね。自分から手に入れたものを手放すのだら。
ま、『日刊ゲンダイ』といった跳ね上がりがりを除いた他のメディアは、すべて民主党の欠点しか報道しなかったから、当然の結果ですけど。」
とTVS首脳。
「そりゃそうですね。うちの社でも、やばいこと言いそうな、ま、つまり民主党に味方しそうな識者は、みんな外しました。
だって、このまま民主党政権が続いて、クロス・オーナーシップの制限(TV局と新聞社が株式を持ち合うことを禁止する制度。これを行うことによって、多様な言論を確保する)や電場帯域の競売制(電波を競売にかけて、その利益を正当に国庫に戻す制度)なんかをやられたら、せっかく戦前の大政翼賛会時代に作られたメディアの寡占が崩れちゃうんですから。大損だ。」
と、毎日新聞首脳。
「寡占性が崩れて、多様な意見がメディアからあふれたら、せっかく築き上げた我々の地位、エリート支配が崩されかねない。本当のことを知った国民こそ、我々が一番恐れるものです。」
その言葉を渡辺が引き継いだ。
「そうそう、結局、国民は何も知らずに、死にそうになりながら汗水たらして働けばいい。
日本を欧米並みの民主主義国にしようなんて、高望みしすぎですよ。日本には日本流の民主主義があればいい。」
「そういえば、ブログを中心とする、インターネットの論調も、みんな消費税反対、民主党反対一辺倒でしたね。これは嬉しい誤算だった。本当に国民をだますのは、赤子の手をひねるようです。」
と朝日新聞社首脳。
「民主党の過半数割れで、国民は何を失うことになるか、有権者はまったく気付かなかった。国民は馬鹿だけど、結局、我々の方が結束も知恵も一枚上手だったということですね。」
と、谷垣自民党総裁が引き継いだ。
「これで、後は民主党から大連立の申し出がくるのを待つだけです。」
「私のところにくるかもしれませんよ。」
と渡辺党首。
「その時は八ツ場ダム建設推進を飲ませないといけない。だって、我々は推進派議員を公認してるんですから。八ツ場ダムの建設会社に天下った国土交通OBも大喜びだ!」
「1人区で協力した我々もお忘れなく。」
と発言したのは、公明党幹部であった。
「我々の協力なくして1人区の勝利はなかった。これまで通りよろしくお願いします。」
「いや、それにしても、民主党が過半数を取らなくて本当に良かった。
もし衆参の過半数があと数年続いたら、それこそ、我々の大切な税金を、国民のために使われてしまうところだった。我々エリートの正当な取り分が侵されるところだったんですからね。
日本も民主化されて、他の先進国のようにクロス・オーナーシップ規制、電波帯域の競売も行われて、我々の独占利益が侵害されるところだった。年金も一元化され、納付者を野垂れ死にさせるための国民年金と、公務員の貴重な老後資金である公務員年金がいっしょくたにされるところだった。老人を早死にさせるための後期高齢者医療制度も廃止されるところだったわけです。
結局、我々エリート支配と国民本位の政治の分水猟が、2010年の参院議員選挙だったわけだ。
我々、鉄の結束を誇るマスコミだって、あと数年、衆参民主党の過半数が続いたら、脱落者が出て、一気に守旧派の壁が崩れるかもしれなかったのだから。そうなったら、国政を強制力で防御する司法官僚だって、天下りし放題の国家官僚だって、それこそ、自民党、公明党、みんなの党のお歴々だって、危なかったわけですから。」
と、ためいきをついたのは、民放連幹部とNHK幹部だった。
「ま、勝ったから、いいんじゃない?」
と、渡辺と谷垣は口をそろえたのだった。
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まるで悪夢です。でも、今の日本はこの方向に向かっているように思えます。