シングル・イシュー選挙の危うさ

 何か消費税にとらわれているあいだに、参院議員選挙は明後日に迫った。これって何かに似ているよなと既視感を感じていたのだけれど、小泉郵政選挙の時と同じだと思いいたった。そこで、急遽、今日のブログを追加することにした。
 そう、以前このブログでも議論があったように、小泉郵政解散の時は、右を向いても左を見ても、みんな郵政民営化の是非を論じていた。僕のブログでも同様だった。その結果何が起きたのか。結局、賛成反対の意見は結論が出ず、郵政民営化以外の選挙の論点はすべて吹っ飛んでしまった。そして、結論が出ない、自民党の圧勝という結果が出たのだ(投票数から言えば民営化反対もしくは現状維持が上回っていたのだが、選挙制度の結果自民圧勝となった)。
 今回も同じことが起きようとしている。
 それは、賛成、反対の立場は関係ない。もし民主党が明後日の選挙で過半数割れを起こせば、児童手当も高校授業料の無償化も、すべて廃止される可能性があるのだ。2年後に予定している後期高齢者医療制度の廃止も年金制度の一元化もすべて水泡に帰す可能性がある。法案は、参院の議決を必要とし、民主党の連立パートナーによっては、これらの政策が大きく変化する可能性がある。
 本来、2,3年後の将来に向けた議論としての消費税10%化よりも、これらの前回衆院選挙で民主党が掲げた、自民流の団体への補助金注入から個人への税金投入の方が、遥かに大事な問題だ。自民流のすでに景気浮揚で失敗した、自分を支持する団体への税金注入は、景気浮揚をもたらさない。それに引き換え個人への直接の税金注入は、ダイレクトに消費に結びつくだけに、景気浮揚の効果があるものだ。もちろん、年金、教育の無償化などとセットになって、はじめてその力は倍増される。しかし、それらの政策をすべて忘れさせるマスコミの戦略こそ、このシングル・イシュー選挙だったわけだ。
 そして、今回も全く同じである。
 これは再度書くが、賛成・反対の立場は関係ない。この1点に議論を集中させ、他の大切な政策を忘れさせること、これこそメディア・ファシズムの真骨頂というべきものである。
 そして、鳩山=小沢政権を葬った「政官財報の鉄の四角形」は、今回も有権者操作・洗脳に成功することになる。

 で、ここで引用。

 で、総理大臣がどうだから日本がうまくいかないとか、政治家が悪いからって言葉は、岡田監督がアホだから日本は弱いと言っていた時代と同じような、過去の錯覚になるんだろう。いや、歴代の政治家はみんな国民のことを考えている、というようなぬるい話ではなくて、政治はようするに国民のひっつき虫でしかないということだ。
 −−『週刊アスキー』2010年7月20日号、21頁。神足祐司Scene2010「今の日本&ワールドカップ

 『日刊ゲンダイ』以外のTV・新聞といった、ほとんど日本のすべてのマスコミが歩調を合わせてシングル・イシュー化を目指し、民主党過半数割れを目指しているなかで、有権者に「冷静になれ!」と叫ぶのは、酷な話なのかもしれません。
 しかし、その国の政治は、結局、国民の理解度に比例する。しょせん政治家は「国民のひっつき虫」なのですから。
 ファシズムか民主主義国かは、残念ながら、こうした国民の理解力に比例します。それは西部遇流のエリート独裁を志向しない主権在民主義者の宿命でもあります。
 だからこそ、政治に関心を持つ人間として、こうした公共の場で発言する意味もあるわけです。
 選択肢は民主党過半数獲得と共産党社民党の躍進しかない。でないと、過去のつらい経験に、本当に学べていないことになります。
 そして、僕は、マスコミによる有権者意識の操作・洗脳こそ、何よりも優先して解決すべき現在の最大の問題だと考えます。これはメディア・ファシズム対民主主義の戦いです。多様な言論なくして民主主義はありえません。だからこそ、明後日の選挙は日本の民主主義がかかった重大な選挙だと、僕は考えます。