「ただ、勇気を出すだけで……」

EMOTION the Best 魔法使いTai! OVA collection [DVD]

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 チャンネルNECOで放送中のOVA『魔法使いTai!』(まほうつかい たい)(全6話)の第5話を見ました。放送されていることに、第2話で気づいて、録画予約して見ているアニメです。今回は、主人公、沢野口沙絵(さわのぐちさえ)が釣鐘に連れ去られたところでエンディング。次回、最終話が待たれる展開でした。
 この物語は、宇宙人(その宇宙船の形状から「釣鐘」と呼ばれる)の侵略に対して、高校生たち5人が魔法で対抗するという、とんでもない設定で、学園ラブコメも含めた楽しい作品です。ハルヒのようなツンデレが好きな人もいるとは思うのですが、僕はやはり、ドジだけど一生懸命な女の子が好きで、『魔法使いTai!』は、その意味でつぼにはまった作品です。
 こうしたドジっ子の系譜をたどると、J・さいろーさんのコミック『JACK UP』のヒロインで魔法少女の豊臣操ちゃんなんかも、その典型なんですが、『魔法使いTai!』の沢野口も、操ちゃんと同じくらい一生懸命でドジです。比較対象がマイナーで申し訳ないのですが、傑作なので、『JACK UP』(成人向け)は見かけたらぜひ手に取って下さい。
 今回録画する前にも、このシリーズは、レンタルで少しだけ見ていて、その時は、主人公たちが魔法を使うときの魔法クラブの制服が、ボディコンなのがかわいいなと思い、気になっていました。
 このアニメは、これまで書いた他にもいろいろな魅力があるのですが、キャラクターの絵がかわいいのもその一つです。主人公の髪型とか、女性登場人物の目を伏せた時のまつ毛の厚さとか、鉄棒にまたがる訓練とか(笑)。まだ第6話(最終回)は見ていないのですが、このOVA全6話には、このアニメの特徴的な魅力がすべて詰まっているのではないかと思います。オープニングとエンディングの曲、そのアニメーションも素敵で、高校生たちの日常がしょぼいのもある意味、魅力の一つです。
 第5話で部員の中富七香(なかとみななか)が先輩の油壷綾之丞(あぶらつぼあやのじょう)に恋を打ち明け、先輩がそれに返事をするシーンとか、なかなかのセリフでした。主人公、沢野口と部長、高倉の、両思いだけれどなかなか言い出せない時期の雰囲気は、まさに「終わらない夏休み」(いい意味での)といった感じで、まさにジュブナイルならではの典型的魅力のひとつだと思います。
 ちなみに「終わらない夏休み」とは、押井守が監督した劇場版アニメ『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』のテーマとして設定したもので、アニメ『新世紀エヴァゲリオン』のテーマを論じる際によく引用された考え方です。押井監督は、この『ビューティフル・ドリーマー』をとおして、繰り返されるだけの甘い夢を否定的とらえるという姿勢を示しました。しかし、逆に言えば、現実にはこうした「甘い夢」は永遠に継続することなく、必ず終わる。だから文学的価値がある、とも言えるわけです。この意味で、僕は肯定的に、この言葉「終わらない夏休み」をここで使ってみました。
 話を戻すと、その4人にからむ後輩、愛川茜(あいかわあかね)の存在も、魅力的な大人の持つ孤独を表している。こうして考えると、はなはだ教科書的で図式的ではあるけれど、非常に効果的な人物配置になっていることに気付かされます。娯楽作品は感覚的に楽しむものですが、分析しても、実は考え抜かれて作られていることを証明しているように思えました。

 表題に引用したのは、「ただ、勇気を出すだけで、夢のつづき現実になる……」というオープニングテーマ『I Wanna Do More』の出だしで、じつは、この作品の中心となるテーマとは、こんなところにあるのではないかと思いました。単純なことですが、世の中、勇気を出す前にあきらめてしょぼくれたりるすることが多いですから、重要で思い出す必要のあることだと思いました。
 5月11日(火曜日)は第6話OVA編最終回。
 5月18日(火曜日)からは、WOWOW版の続編アニメ(全13話)も放送されるそうです。続けて見ようと思っています。