小沢報道(その2)+普天間移転前にすべきこと

 土曜日の「パックインジャーナル」に元検察の郷原さんが出ていて、小沢問題の概要を知ることができました。簡潔に書くと、小沢は政治団体名義の土地を買うために銀行から融資してもらった。しかし、その融資の前に、自己の資金で土地を購入し、銀行の融資はその後になった。そのため、小沢側は銀行の融資は政治資金として記載したが、自己資金のことは書かなかった。郷原さんは、これは取引として自然なものであり、これで不実記載を問うのはおかしいのではないかという結論でした。1月17日付朝日新聞朝刊1面に載った、党大会での小沢氏の説明もそれを裏付けるものです。
 また、TV等で報道されるように、検察はこれまで、政治資金報告に誤りがあった場合それを訂正することでよしとしてきた。しかし、今回だけは、衆院議員の逮捕まで行った。こうした状況を考えると「石川議員が自殺する恐れがあったため逮捕した」という検察リークによる新聞報道も眉つばのように思えます。「自分が不正記載した」という石川議員の証言翻し発言も、実際には検察で取り調べ中であることを考えると、本人の発言というより、検察が自己の行動を正当化するために、意図的に流していると考える方が理にかなっています。なぜなら、もしこの発言が裁判で翻っても、検察は自分達が発表したことでなく新聞が勝手に書いたことだ、と言い逃れできるからです。
 検察は、この4億円に、わいろ性のある資金が使われているらしいから捜査していると報道されています。しかし、もしその証拠を検察がつんでいるなら、まず小沢を逮捕するはずです。しかしそれをしないで、周辺から逮捕するのは、証拠をつかんでいない実態を、図らずも示しているように思えます。
 検察にしてみれば、政権交代以前から自公政権への援護射撃として行ってきた捜査の延長として、今さら後に引けない。引いたらパージされるのは自分たちだ、との恐怖心から行動しているように思います。検察担当者の功名心よりもその方が強い気がします。なにしろ、55年以上も、自民以外のヘッドをいただいたことがないのですから、現状に対応する頭に切り替えられないのだと思います(これが、非常に重要な、職務に対する背信行為であることはあとで書きます)。そして、その検察に対するパージは今年4月の人事で現実のものとなる。だからその前に小沢を失脚させる、もしくは失脚させないまでも「検察に対する恐怖」を植え付けることに成功したい、と考えているのでしょう。それが、異例の逮捕を生んだ。
 僕はこうした事態を見て、法務大臣は指揮権を発動をしてもいいと思う。なぜなら、これは、明らかな検察の暴走と考えられるからです。軍隊ならクーデターに相当するものです。
 いまのところ法務大臣にしろ鳩山首相にしろ、有権者の反発を恐れてその手段はとらないようです。
 しかし、こうした「証拠に基づかない捜査」は、起訴された後、裁判所という法廷で、それこそ証拠を元に再検証されるわけです。その結果、現在、小沢追求をしている検察の担当者が「長銀疑惑」で逆転無罪をつきつけらたように、結局、無罪判決が出るのではないかと思います。
 石川議員だって、不実記載でやましくないのなら、裁判での勝利を目指せばいいのです。「逮捕=不正を働いたこと」では決してない。ましてや、小沢サイドの献金疑惑に関しては、検察が言っているだけで、証拠のある話ではないのですから、なおさらです。
 いずれ真実は明らかにされる。だから、今の報道などで大騒ぎする必要は全くないと僕は思います。もしここで大騒ぎしたら、それこそ検察の意図に載せられて、国民の意思で実現した政権交代を、検察の世論操作によってだいなしにされることになるように思われます。そしてそんな権利は検察にはない。検察は政治的に民主党に味方せよとは言わないが、せめて政治的中立を保つべきです。もしそれが保てないとしたら、それは先進国の検察として絶対にあってはならない、国家反逆的行動だと思います。国家という言葉はあまり好きなではないから言い換えると、日本に住む人々に対する反逆と言い換えてもいいでしょう。
 最後に付け加えると、検察をやめて弁護士になった連中の言うことは聞く必要がないように思います。なぜなら、彼らは、検察に便宜を図ってもらって裁判を行いたいがために検察批判は全くしない。むしろ白いものも黒いと検察が言えばそれに従って、いけしゃーしゃーと発言するような輩だからです。郷原さんのような、大学というアカデミズムで職を得て、現在の検察と利害関係のない人間の発言こそ重視すべきだと思います。ここまで書くまでもなく、その内容の論理性に従えば、十分なのですが。むしろ、論理性ではなく、検察が逮捕したらか悪みたいな、感情に走ることが、日本を本当の危機に陥らせることになると思います。僕らは公開の裁判を注視すべきです。佐藤元福島県知事の裁判は、ダム賄賂疑惑であれだけ報道されたにもかかわらず、裁判では賄賂性が否定されつつあります。だとしたら、これはフレームアップだったということです。佐藤氏は、県内の原発建設に強硬に反対していたといいます。電力会社は非常に困っていた。フレームアップの理由は十分にあります。検察がいかにこの件で動いたかは、佐藤氏の本に詳しいと言います。
 ですから、今回も僕の結論は、前回、小沢報道に関して書いたものとあまり変わりません。

 さて、2番目の話題です。
 鳩山内閣の直近の支持率低下理由として「指導力がないこと」と言われています。でも、それじゃあ普天間辺野古にさっさと移転したら、決断力があるというのでしょうか? そんなことはないでしょう。僕は、普天間の800人の海兵隊員を佐世保周辺の自衛隊基地に移すことがベストだと思っています。なぜなら、この800人は緊急時にその紛争現場に住む米国人、米国永住者、アングロサクソン系諸国、その他などを、この順位で救出するための部隊で、輸送船は佐世保にいるからと、「パックインジャーナル」で田岡記者が言っていたことに賛成だからです。そのほかの海兵隊は、みんなグアムに行くことがすでに合意されています。
 普天間は市街地の真ん中にある、非常に危険な場所であり、また、辺野古に移転するのは、地元の土建屋をもうけさせるために、米軍ではなく自民党が無理矢理考え出した案です。ここでは、過去の嘉手納基地統合案という米国案に反対までした経緯があります。何も正当性はないし、沖縄県民が新たな基地を作らせないと考えるのも、これまで負担を考えれば、当然の主張でもあります。
 ただ、この移転問題を考える時、同時に日米地位協定の改定をし、NATO諸国並みすることが何よりも重要だと思います。民主党的に言えば、地位協定の改善もマニュフェストの項目です。
 NATO並みの地位協定とはどんなものか、よくわかる記事が雑誌『世界』の今月号(2010年2月号)にあったので以下に記します。
 在日米軍が四万人であるのに対して、韓国三万七千、海軍艦船に載る一万五千、のほかはオーストラリア、タイ、フィリピン、シンガポールに百〜二百人。欧州では親米であると言われるイタリア、イギリスですら一万ほどという。特に沖縄はギネス級であるという説明の後に続きます。

 兵力数に加え、欧州と日本が大きく違うのは、基地の使用形態だ。日本は基地管理権を放棄し、米軍の自由使用を認めているが、欧州ではそこは主権との絡みでシビアだ。外国軍の駐留はセンシティブな問題だからだ。
 例えば、イタリアでは夏場のリポーゾ(昼寝の習慣)に米空軍飛行場では戦闘機のエンジンを切る。昼下がりの安息を犯してはならない。米伊間で「基地使用協定」を交わし、すべての基地ごとに使い方の細部を規定している。
 イタリア軍の司令官が基地の管理者だ。飛行経路や滑走路の使用時間、一日の発着回数などが制限されているほか、飛行計画をイタリア軍へ事前通知する。基地内でオイル漏れなどの環境汚染がある場合、周辺自治体の職員がすぐに基地内で立ち入り調査できる。
 米軍機の事故などがあると、イタリア軍警察が事故機を差し押さえる。米軍は返還要求するが、イタリアは証拠品なので譲らない。地方検察官が米軍パイロットから事情聴取する。これがおそらく「対等」の要件なのだろうが、日本政府にはおよそ真似できないだろう。
 北大西洋条約機構NATO)は共通の地位協定を持ち、それに加えて各国事情に合わせる基地使用の取り決めがある。駐留外国軍の法的地位(裁判権、入国、関税など)を定めた協定と基地使用を規定した協定の二重構造になっている。特にドイツとイタリアは冷戦崩壊後に使用協定を改訂し、住民保護を強化した。
−「米軍は沖縄にこだわっていない−政治が出すべき21世紀型の解」屋良朝博(やらともひろ)沖縄タイムス社論説兼編集委員(『世界』2010年2月号、202頁)

 現在の日米地位協定が改定されなければ、どの自治体でも、米軍一人でも来ることに反対するは自然なことです。
 フィリピンでは地代を請求したら、米軍は出ていったといいます。そこから、日本人はフィリピン人並みの勇気も持てない腰ぬけである、などと言われることになるといいます。ましてや、米軍に金まで払っている日本がNATO並みの地位協定を持てないとしたら、それこそ日本のアメリカに対する「隷属」、いや「自発的隷属」以外の何ものでもありません。それが自民党政権自公政権下の日米関係でした。
 それを対等にすると明言した鳩山政権であるのなら、「NATO並みの地位協定が実現できないなら日米安保は破棄する」とアメリカに迫るべきでしょう。ついでに、アメリカに、「そのときは、日本独自の核戦力を持たざるを得ない」と言ってもいいかもしれません。そうしたら、そして、その決意が確固たるものであることがアメリカに伝われば、彼らは簡単に地位協定の改善に同意するはずです。引用の著者は、日本政府にはおよそ真似できないといいますが、それは、自民党政治の発想に縛られすぎのように、僕には思えます。
 核兵器を持つことが国民感情から不可能なら、欧州かロシアか中国と核防衛協定を新たに結べばいいだけです。一方的に日本に対する各攻撃から守ってもらうという協定です。どこの国だって、日本が核兵器を持つより、その方が利益がありますから。そんな約束、信じられない、とこれを読んだ人は思うかもしれません。でも、だったらアメリカが日本を核攻撃から守る保証も、どこにもないと考える方が自然ではないでしょうか。
 鳩山はもう少し自信をもって「米軍基地なき日米安保」を主張していいと思います。ま、それを言わないのは政治的駆け引きの上でのことなら、最低限、普天間移転までに、地位協定NATO並みに改定すべきでしょう。
 負担を沖縄だけに押し付けて(本当は本土の米軍基地の負担も同様なのですが)、平気な顔をしていたのが、自公政権だとしたら、民主党はその違いを明確にすべきです。
 これが、移転前に地位協定の改善をと、僕が主張する理由です。