最近は本当に話にならない話が多いのだが、ライブドアをめぐる騒動もその一つだと思う。堀江逮捕の翌日は「過熱気味のIT株式相場を冷ます意味なのかな」みたいな話も職場で出ていたのだが、あれはどうみても耐震偽造業者と森派、特に安部との贈収賄疑惑辛目をそらす目的だったと見るべきだろう。
 それが証拠に、あの逮捕以来、すっかりマスコミはライブドアに報道を集中して、贈収賄疑惑は背景に隠れている。もちろん検察は以前からライブドアを捜査していたのだろう。しかし、このタイミングで逮捕にGOサインを出したのは、官邸の判断である。そして、ここからが重要だが、この捜査で、もちろん耐震偽造事件もそうだが、森派、小泉周辺からの逮捕者は絶対に出ないということだ。もちろん、彼らが潔白だからではなく、政治権力者だからに過ぎない。武部メールの際に、あの異例の速さで出された、検察の「そんな情報はない」という発表こそ、こうした小泉と検察の異常な接近を物語るものだろう。メールの真偽が問題なのではなく、捜査中にもかかわらずこうしたコメントを出すこと自体が、異常ということなのである。
 『週刊アスキー』連載「仮想報道」は僕の好きな記事なのだが、今週号で歌田明弘さんが、はっきりした違法性も示さずにいつのまにか大悪人のように報道されることの危惧を訴えていた。全く同感だ。そして、歌田さんは、取調に弁護士を同席できないのは、日本の捜査当局の前近代性であることを主張している。これも同感だ。しかし、歌田さんは、忘れているのではないだろうか? 去年の選挙で小泉を支持したことをである。政敵に対しては検察を使って徹底的に排除する。そして、自分の味方は、権力を介入して、無罪にするという、司法の公平性という原則を捻じ曲げた本人が小泉であったという事実にも触れるべきだっただろう。確かに、今回の選挙から派閥は背景に退き、党中心の選挙になった。しかし、これは歌田さんがいう小泉の成果というよりも、細川内閣によって導入された小選挙区が必然的にもたらした結果にすぎない。そうした選挙においては、与党野党を問わず、党首が国民に直接語りかけるのは必然というべきで、それゆえ、この姿勢も小泉の成果ではないことになる。小泉のわかりやすさは、それが真実の言葉だからではなく、ペテン師のわかりやすさと言うべき性質のものだからだと思われる。だからこそ、郵政民営化選挙といわれた昨年の選挙でも、反対派もしくは慎重派が得票数で賛成派を上回ったと考えるべきだと思う。