夏目房之助著『マンガは今どうなっておるのか?』(メディアセレクト・2005)

マンガは今どうなっておるのか?

マンガは今どうなっておるのか?

 夏目さんの新作を今日読み終えた。
 表題の割には現在を代表する作品が網羅的に取り上げられているわけではないのだが、いくつか特徴的な作品はピックアップされている。そして、この本で印象的なのは、夏目氏の『BSマンガ夜話』でもおなじみの、批評を客観化するためのこだわりである。それゆえ、文芸批評ならぬマンガ批評の技術が詳しく論じられている。
 マンガを僕らが見る場合、自分の好みか否かが、まず問題になるのだけれど、批評の段階に行くと、それを多くの人に納得のいくように説明する必要が生じる。その場合に有益なのが、「夏目の目」に代表されるマンガ表現論である。しかし、それだけで十分なわけではなくて、まず各世代に属する各人の好みがどのように発生するかを分析する段階に進む必要がある。
 自分の好みや、他者の好みを客観的に分析し、そのうえで、書く対象となるマンガの面白さを説明していく。だから、受け手である読者の社会階層的構造分析、送り手の出版社や編集者の構造分析、そして、アニメやゲームなどとマンガとの関連についても分析される。
 このように、マンガ批評の手法についての記述がこの本の大部分を占めているような気がする。
 そして、その手法は、まずマンガファンである自分にとって面白いのだが、同時に、現代社会分析に応用することも可能な点で、興味深かった。政治学の重要な領域の一つに政治文化の分析があるからだ。
 そのほかマンガや本や雑誌などいろいろ買ったのだが、ぼちぼち紹介したいと思っている。