郵政民営化の見方2

 左大臣さん、長文のレスありがとうございます。
 貴殿のレスや、ほかの人のネットでの意見などを見て、もう一度考えました。
 最初、僕は「小泉政権郵政民営化法案反対」を提起していたのですが、いつの間にか「郵政民営化自体の反対」みたいな書き込みになっていました。そこで、もう一度書き直します。
 僕は、「小泉政権の下での郵政民営化に絶対反対」すると。
 左大臣さんの意見とか聞きながら、なぜ自分はこの民営化の意見にしっくりこないのかを考えたのですが、その理由は、基本的に僕は小泉は絶対に信用ならないと考えているからでした。これまでさんざん我々(企業と年収3000万円以上の金持ちを除く)に煮え湯を飲ます政策を続けてきた小泉が、郵政民営化だけ、万民にとって利益のある政策を採るはずがないというわけです。
 そして、こうした自分の意見を傍証する記述を探していると、それなりに見つかるものです。前回コメント欄に引用した
http://d.hatena.ne.jp/mojimoji/20050823
等はそうした意見の代表です。
 また、雑誌『世界』2005年9月号特集「「小泉政権」とは何だったのか」で金子勝氏が「小泉「構造改革」の帰結−もはや小泉政権は政府の体をなしていない」という論文を書いていて、そのなかで小泉政権の4年半の総括をしています。郵政民営化に関する部分は短いので、そのまま引用します。

 現在、小泉政権郵政民営化を最優先課題に掲げている。そもそも、郵政民営化は、郵政肥大化による民業圧迫を防ぐ郵政縮小論であり、財政投融資の入り口を絞ることで、特殊法人改革を推進するのが名目であった。ところが、小泉政権は、新規国債の発行枠30兆円という公約を投げ捨て、郵政公社発足後も、郵政・簡保に大量の国債を引き受けさせてきたために、郵貯簡保の縮小はできなくなっている。その一方で、民間並みということで、さまざまな金融商品の取り扱いからコンビニの併設まで、事業範囲を拡大することで、「民業圧迫」をもたらそうとしている。この郵政民営化は、自身が掲げる政策目標とは全く相反しているのである。また道路公団「民営化」に見られるように、民営化は新たな粉飾の手段となっている<拙著『粉飾国家』第六章参照>。そして、高級官僚達の天下りもファミリー企業の腐敗も、民営企業という名の下に議会のチェックが効かなくなる。
 小泉の「構造改革」は日本を何も変えていない。それどころか、二枚舌のシミュレーションで「国民」を騙しながら、ただひたすら「民営化イコール改革」という呪文を唱えている間に、ますます社会の持続可能性を喪失させているだけである。四年以上にわたる小泉政権の下でいたずらに時を浪費して、「失われた10年」に続いて新たな「失われた5年間」をもたらしてしまった。

 この論文や、そのほかの特集記事は、ほかにもいろいろなことが書かれているので、9月11日の選挙前必見の特集といえます。『世界』がほかの月刊誌と違うのは理論的背景を持った学者やジャーナリストが論証に耐える記事を載せていることが最大の特徴といえます。単なるセンセーショナリズムではないわけです。
 小泉の郵政民営化には、民営化された後の郵政事業の全体の継続に関する視点が欠如しているといわざるを得ません。金子氏と反対の可能性をあげれば、つぶれるならつぶれてしまえ、といった内容だと思います。
 それでも、小泉が、本当に考えている政策目標は実現できる。1.特定郵便郵便局連合という橋本派の息のかかった政治組織を破壊できる。2.郵政事業解体の過程で、アメリカを中心とするハゲタカ資本家の利益を確保できる(アメリカが年次要望書で郵政民営化を求めている理由がこれです)。まさに、堀江が「(郵政民営化は)ビジネスチャンスなんじゃないですか」と答えるとおりです。この2大目標を実現できるのなら、小泉はその先は何も考えていないと考えるべきです。決して、公務員の不公正な高額給与の是正など、全く考えていないと言っていいと思います。もしそれを考えているのなら、彼が政権を持っていた4年間にいくらでも改革ができたはずです。全くしなかったのが実態ではないでしょうか?
 こうして考えてくると、郵貯簡保の規模を縮小しながら(この過程には、当然国債等の引き受け学の縮小も含まれるはずです)、郵政事業規模を適正化して、その後に、民営化も含めて検討するという民主党のマニュフェストのほうが、遥かに合理的で、しかも国民のためになると考えられるようになりました。ソフト・ランディングを想定しているからです。
 だから、僕はもう一度訴えたい。小泉の口車に乗るな! と。
 そして、その証拠は、これまでの小泉政権のやってきたことを見ればわかると。
 小泉は、橋本派をつぶすためだけに日本の政治を私物化してきた。そのためにだけに政治を行ってきたのであり、平均的国民のための政治は何一つ行ってこなかった。官僚を優遇するのは、橋本派をつぶすために仲間は多ければ多いほどいいからです。有権者は、たとえ優遇しなくても、簡単に選挙で騙せると思っているからでしょう。郵政民営化というニンジンをぶら下げるのも、公務員に対するサラリーマンの怒りを利用すれば、自分達が勝てると思っているからで、これはロシア皇帝の悪名高い「分断して統治せよ」と同じである。「知らしむべからず、寄らしむべし」と言ってもいいかもしれない。
 選挙が終わったら小泉はさっそく、改革の本丸は終わった、これらからは国家財政を是正するための負担増だと言って、しかも、欺瞞的にもほどがある、高額所得者と企業を除く、恒久減税という名の減税措置を中・低額所得者だけ外して、サラリーマンへの増税路線に転ずる。実際、国民負担はこれまでも増え続けているわけです(別に僕は、金持ちや企業に自民党支持をやめろとは言いません。でも彼らにとっても、小泉政権自体によって、企業や金持ちの長期的利益である、日本社会の持続可能性が損なわれていることを告げなければなりませんが)。それも公務員の既得権益を守り通した小泉政権の政策の帰結である。
 だから、国民は、何が真実なのかを、今こそ見分けなければならないだろう。
 小泉は、日本がこれまで積み上げてきた資産を食い潰しながら、己の息のかかった議員による自民党完全支配という政策目標を追及しているにすぎない。そして、それを使った日本支配を執拗に追及している。これは国民の利益ではなく、彼の単なる自己愛、それも我々にとっては破滅的な結果をもたらす「自己愛」と言うべきだろう。
 であれば、我々の選択は明確だろう。与党以外の政党に投票すべきである。