みなもと太郎『冗談新選組』

 前置きが長くなりましたが、最近読んだ、みなもと太郎『冗談新選組』(ISBN:4872573986)の感想を書きます。
 この本は現在放送中のNHK大河ドラマ新選組!』の脚本家、三谷幸喜さんが薦めているということで読みました。思った以上に面白かったです。
 前半の「冗談新選組」も三谷さんの種本として面白いのですが、特に後半の「仁義なき忠臣蔵」には驚きました。これまでいわれてきたように「日本人と忠臣蔵」(ルース・ベネディクト菊と刀』など)としての理解ではなく、「日本人とヤクザと忠臣蔵」として理解すると、忠臣蔵は非常にわかりやすいという意見でした。その証拠に、徳川300年の歴史で幕府にそむいた藩が赤穂藩だけで、彼らの方言は日本で一番ドスが効いた(広島弁よりドスの効いた)ものであると書かれています。
 そして、こうした赤穂浪士のヤクザ的行動としての理解を展開したあと、みなもとさんは、最後にテロの話を書きます。
 「理性を失った情熱は、テロリズムに走る他ありません。
 逆に情熱を捨てた理性家は、皮相的な世捨て人になってしまうでしょう。
 大情熱を実現させるためには大理性が必要であり、大理性をつき動かしていく原動力になるのが大情熱だと思います。
 正義の怒りをテロに向けず、人間を生かす方向に楫(かじ)をとっていく−−そんな強い意志を持ちたいと願う、今日この頃です。」(191頁)
 テロは、身近な話題です。みなもとさんが只者でない証拠ですが、いろいろ考えさせられました。僕は書斎派ということもあって、皮相的な世捨て人になりがちなのですが、そうした意味で、そして現在の社会現象を理解するうえでも重要な言葉だと思います。