今、ケルンから、この旅の最終目的地・ベルリンに向かう列車であるICE653に乗っている。一等の喫煙席だ。
 前回の日記に書いたミュンヘン空港に着いてから、タクシーで中央駅前のホテル・エデンに向かった。
 翌日はフュッセンでホーエンシュヴァンガウ城とノイッシュバンシュテイン城を見学した。
 その翌日となる5月1日は、オバーヴェーゼルに向かい、リンダーホフ城とヴィーナスの洞窟を見学した。ヴィーナスの洞窟とは、ルードヴィヒ2世が地底に洞窟を作り、そのなかに池を作って、黄金の貝の船を浮かべて英雄神話世界にひたったところで、リンダーホフまで足を伸ばした目的地だった。
 スイス国境に近い、こうしたバイエルンの観光地は、ここで見学を終え、その足で、次の目的に向かった。
 ミュンヘン中央駅でいったん下車してホテル・エデンまで荷物を取りに戻った後、ライン下りの起点となる都市、マインツに列車で向かった。
 マインツ駅は雨だった。ハイアット・リージェンシー・マインツにタクシーで向かい、翌早朝、船着場からKDラインの観光船でライン下りを始めた。当初オーバーヴェーゼルで下船し、古城ホテルであるシュローホフ城に行く予定だったのだが、勘違いで、次の船着場であるザンクトゴアールで下船してしまい、そこからタクシーでホテルの城に向かった。
 そして今日はオーバーヴェーゼルから船に乗り、コブレンツで下船、そこから列車でケルンに向かい、このICE653に乗り換えたわけである。ベルリン・ズー駅着は9時3分なので、食堂車で夕食をとる予定。
 今回は、Rと僕の父と、通訳兼案内役の僕のドイツ在住イギリス人の友人の4人旅である。
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 そして、いまこのたび最後のホテル、サボイ・ホテル・ベルリンに着いたところだ。簡単に明日の打ち合わせをしたのだが、:Rと父は寝てしまったので、ひとりで日記を書いている。
 明日は、ベルガモン博物館に行った後、日本料理店で昼食を取って、壁博物館・チェックポイントチャーリーハウスに行く予定。

 読み終わらなかったため持ってきた『世界』5月号で面白かった記事は、今ドイツにいるせいもあって平野洋「ドイツ・東欧間に突き刺さる「歴史問題」のトゲ」と上野俊哉「ストリート群島−世界を変える言葉を探して」4「日常生活における亡命」だった。
 ドイツ東欧問題とは、第二次世界大戦後に大量に発生した、国内に強制帰還させられた東欧在住ドイツ人に対する補償問題のことで、いろいろな立場があることを思い知らされる。この問題には、ホロコーストヒトラーの侵略と好対照である権利回復に熱心なもう一つのドイツ人問題が見える。不思議な感じがした。
 としやんこと上野氏の記事は、まさに、マルチチュードが世界を変えるといったネグリ=ハート的問題意識が生きている。一口に階級闘争とは言い切れない雑多な運動が、結果として民衆の側に立つといった契機を描き出している点で興味深かった。
 その後は、思想4月号「カント永久平和論と現代」特集を読み始めた。ドイツにいるからちょうどいいといった感じで持ってきたのだが、M.コスケニエミによる同問題のレビュー的作品「世界市民的な目的をもつ普遍史の理念と実践」は興味深かった。でも、この特集、日本の筆者が1人もいないのは、日本における同研究の現状を示しているような気がする。続けて読むつもり。