2005年9月20日の朝日新聞夕刊の「夕陽妄語」

 昨日の朝日新聞夕刊の「夕陽妄語」の「選挙の後に」で加藤周一さんが「選挙民は、今回の選挙で、変わらないことを選んだ」といった趣旨のことを書いていて、自分のこれまで書いてきた印象と違うので、ハッとさせられた。
 たしかに、選挙直後の読売新聞アンケートでは「新しい小泉内閣で改革が大いに進む」と答えた人は20%だったという。これを見ると、あんなに小泉が「改革」「改革」と叫んだにもかかわらず、大部分の有権者は「別に変わんないんじゃないの」といった印象を持っていたことになる。
 そこで、加藤氏は「面白い小泉劇場は楽しむけど、本当は従来の制度を大きく変えてほしくない」というのが有権者の本音と分析するのである。これは意外と当たっているかもしれないと思った。
 郵政民営化は政府案が通っても10年後だし、諸改革は先延ばしでいい。民主党の「郵貯簡保の縮小」という代案は、いかにとってつけたような案だし、政府案と比べて、むしろ銀行保険業界に有利な代案である。決して有権者の利益を考えた政策とは言えない。その意味で、現在の前原新執行部ですら大きな思い違いをしているようにも思われてくる。
 有権者が本当に望んでいるのは、税金を無駄使いしない中央政府であり、そのうえでの財政再建であったのだろう。無駄使いをなくすのはいい。だが、その内容が具体的に見えない以上、民主党のマニュフェストでさえ、有権者には本当にやる気があるのか?と思わせる内容だったように思う。だったらもう少し改革を先延ばしして、面白い小泉劇場を、自分はことに関わらず、安全なところで見ていたいというのが有権者の判断だったようにも思えてくるのだった。
 ましてや憲法の9条の改悪や消費税アップなどは誰も望んでいないだろう。だから、それをしないと言った小泉を支持するのは自然な流れとも考えられるのである。
 しかし、だとすると、改革を叫んだのが勝因ではなく、改革を叫ぶけれど改革をしない小泉を、有権者は見抜いて、なおかつ改革をしないという一点で支持した、という奇妙な現実がリアリティを持つのである。
 それにしても、1年先の小泉後は増税ラッシュに決まっているので、そのときは代案を出せる政党が得票するのだと思う。
 民主党の前原はその受け皿にはなりえないだろう。それゆえ、本当に9条護憲や生活を守る政策を打ち出せる政党を有権者は望むだろうと思う。その政策には、本当の地方分権や、安全で安い農業生産物を食べられること、エネルギー危機を自然エネルギーによる代替によって解決する政策なども、含まれるだろうと思う。民主党の食料自給率アップのマニュフェストは、今回僕がひそかに注目していたものだった。
 僕の印象では、民主内旧社会党系議員や、新しい辻元社会民主党あたりが、その受け皿になりえると思う。そのときは、久々に、死語となっている社共共闘が復活するかもしれないとまで思う。これは、今では、結構マジに思うことだ。だってこのラインで有権者の期待に応えられるのは、このグループしかいないからだ。
 あと、最後に告白しておくと、あれだけ民主に入れると日記に書いておきながら、僕は投票用紙を前にして直前に共産党候補に入れてしまいました。だって、板橋区には、民主、自民、共産党の候補しかいなくて、民主の候補者は旧自由党系の「9条改悪賛成」「先制攻撃支持」の議員だったから。自民優勢とニュースで聞けば、誰だってそんな民主党候補に投票するのはためらわれるというものだ。比例区共産党に入れたけど、本当は、自分の考え方からすれば社民党に入れるべきだったのか、と反省しているところである。やっぱ小選挙区に候補者がいないと忘れがちなので申し訳なかったと思う。
 マジで、板橋に社民党候補がいたら、自民を抑えたのではないかなどと思った。だって本当に選択肢が限られていたからだ。自民党という右、それより右派の民主党候補じゃ、選択肢が限られるのも当たり前なのである。 
 ともかく結果は、議席数でいえば自民大勝利だ。けれども、それに危惧した人も多数いることもわかった。次の選挙こそまともな政策で争いたいものである。
 それでも、反ファシズム強化年間は継続する予定。注意は払い過ぎることがないからだ。