誰が民主主義を殺すのか

 NHKドキュメンタリー政治圧力問題に関して奇妙な現象は、この事実を肯定する側も否定する側も、本心では「絶対に自民党議員による政治圧力はあった」と確信している点にある。そもそも、国会で予算が承認される必要のあるNHKが与党議員の意向を無視するはずはないからだ。だとしたら、当然圧力はあるはずで、NHKの番組は報道も含めて現政府寄りになるのは当然だからである。
 そして各論的には、こうした報道に関しては裏づけとなる証拠が焦点になるわけだが、朝日新聞社はほぼ確実に件の取材テープを持っているといっていい。でなければ、裁判も視野に入れたNHK側への抗議には踏み切れないはずだからだ。
 朝日新聞に律儀に掲載されるので、『諸君!』『SAPIO』の広告は、自然とその見出しだけは目に入る。だから書くのだが、こうした政府の意向にそった政策を露払い的に汲み取って紙面構成をする権力の番犬雑誌、御用雑誌は、一気に朝日新聞批判に集中している。しかし、彼ら自身、自民党NHKに圧力をかけていることは、先刻ご承知なのにもかかわらずだ。このように、全員が真実を知っているにもかかわらず、自己保身のために「圧力はなかった」と主張する姿は、こうした右翼雑誌が一番嫌う、北朝鮮朝鮮中央テレビと同質のものといえるだろう。NHK職員は自分の首を心配し、雑誌社は彼らの主要読者とする右翼・右派、政府寄りの人々のご機嫌におもねるために、これを行っているわけである。その意味で、誰が民主主義を殺そうとしているかは、誰の目にも明らかだろう。
 だからこそ、早く裁判始めればいいのにと思う。