香田さんを殺したのは小泉である

 香田証生さんが殺された。殺したのは小泉である。

 なぜこう言えるかというと、今被災者が苦しんでいる新潟地震がある。目の前の被災者が死にそうになっている場合、レスキュー隊員が、彼らができる救助を何もせずに放置し、その被災者を死にいたらしめたとしたら、レスキュー隊員は職務怠慢以上に刑法上の保護義務違反に問われ罰せられる。

 小泉は日本人の生命を救うために最大限の努力をする必要があった。自衛隊の撤退を含めた最大限の努力である。しかし、彼は、「自衛隊は撤退させない」と言い切ることで、最初の段階での救出のための最小限の努力すら放棄し、幸田さんを死にいたらしめた。これは小泉による殺人であると言っていい。今や日本人は、小泉によって、われわれ自らの生命すら犠牲にされることを覚悟しなければならなくなったわけだ。

 こうした抗議に対して、小泉支持者はこう答えるだろう。「アメリカに逆らったら、生きていけない」。

 そして、この理論は次のように展開される。「死ぬのは偶然不幸に合った日本人数人にすぎない。オレたち一億人の日本人の命(生活)には代えられない。アメリカに逆らったら日本経済が立ち行かないじゃないか」と。

 人道援助で派遣されたはずの自衛隊を、日本人の生命を救うという人道的な目的ですら撤退できない最大の理由がここにある。決して誰も明確に言わないけれど、誰もが知っている、隠された最大の理由がこれなのだ。

 だから、僕らは、はっきりと言おう。「アメリカに逆らっても、日本は生きていける」と。むしろ、より正確には、アメリカに従っていたら、日本人は生きていけないのだ。日本人は、冷静に、今、この事実を受け止めなければならない。

 日本はアメリカに残された最後の強力な属領である(ほかにもオーストラリアや英国があるが、その影響力は日本と比べればはるかに小さい。そして、日本の動向はアジアにも波及するからなおさらである)。そして、現在日本は経済力でアメリカの世界支配を支えている。逆に見れば、日本というツッカエ棒の取れたアメリカは、崩れるしかない存在だ。だからこそ、日本がアメリカ(政府)の意に反する行動をとっても、それに対するアメリカからの制裁は気にする必要はないわけだ。

 だからこそ歴代自民党政府は、憲法9条を盾にとって、自衛隊の海外派兵をことごとく拒絶してきたのではなかったのか。その結果日本人はどこの外国に行っても歓迎はされても敵意を抱かれることなく行動することができたのだった。これこそが本当の民族主義というべきではないか?

 それを崩したのは、小泉1人の責任だ。だから、彼はイラクにおける日本人5人の死に対して直接的な責任があると主張する。

 そして、自衛隊によるイラク援助であるが、何も自衛隊を送らなくても、同じ予算でより効果的な援助ができるのだ。にもかかわらず自衛隊のこだわるのは、結局ブッシュが欲しがる、軍服を着た人間の派遣を示すためにすぎない。この理論だと、自衛隊員がいくら死んでも、イラクからの撤退はありえないことになる。

 この点で、朝日費新聞の社説にも抗議したい。なにが「この問題と切り離してイラク撤退を考えろ」だ。切り離せないから撤退すべきなのではないか。こうした一連の朝日新聞社説の姿勢は、日中戦争、太平洋戦争に突入したときの朝日新聞と全く変わっていないこと、なにも戦後民主主義から学んでいないことを浮き彫りにするものだ。

 「テロに屈するな」ではない。むしろ、こうしたテロの標的に日本人をした、ブッシュと小泉の姿勢こそ糾弾されるべきではなかったのか? あきれてものも言えないので、代わりにひとこと書いておく。