ベルリンの春、ワシントンの冬

 小泉は何人殺せば気が済むのだろうか? これは再発したイラクでの人質事件を見て思ったことだ。今度は助からないかもしれないと思ったわけだが、イラクでの人質だけを言っているのではない。米軍に殺され、それを日本政府が隠蔽しているといわれている、日本人外交官とイラク人運転手、これから輸入される20ヶ月以下の牛を食べて発症するBSE患者を含めて発言するものである。
 小泉は、これまでの自民党出身の首相のなかでも、突出した対米従属という姿勢を持つ首相である。これまでの首相は、少なくとも憲法9条を盾に、海外で自衛官が直接的な死の危険に直面する事態を回避してきた。それが歴史的な、対外戦争が原因となる政策的に引き起こされた日本人死者を、カンボジアPKOでの警察官殉職までゼロに抑えてきたのだった。しかし、それが、今、明確に破られようとしているわけである。
 イラクにおける日本人外交官の殺害事件では、米軍誤射説があれだけ語られていたのにもかかわらず、現場検証を怠り、結果として米軍の証拠隠滅に協力した。
 そして、1997年当時から、倍増した国内の自殺者数(http://www2.ttcn.ne.jp/~honkawa/2740.html)は現在も減少するけはいがない(ちなみに小泉政権の発足は、2001年4月)。これは、いくら改革と唱えても、実質的には、大企業の業績回復のために行われた数々の不法労働行為を黙認し、必要な失業者保護を行わなかった小泉の政策の結果にすぎない。年金受給者が生きて行けないレベルに支給を抑えることによって、未来永劫に維持されることになった年金制度の「抜本的改革」も同様だろう。今や政府当局者ですら、まだまだ年金改革は不十分と発言しているのだ。
 そして、一番考えなければならないのは、こうした小泉政権を、いまだに、ありもしない夢を見つづけることによって支えつづける、日本の一部有権者が持つ反動的な姿勢だ。