メメント・モリ

 香田さんの死の責任が小泉にあることに関する僕の説明は、いまひとつわかりにくかったかもしれない。

 はてなダイアリーで2か所ほど同問題関連の書き込みを読んだのだが、ある人は香田さんのタナトスが原因なんだから、小泉に責任はない、という意見。もうひとりの人は、安易な自分探しの旅はやめろというあてこすりが書かれていた。この2人は自称左翼なので、余計にちゃんと反論しなければと思ったのだが、彼らにすれば余計なお世話かもしれない。

 ともかく、もう一度この件に関する僕の意見を整理して書くと、彼がどのような意図でイラク入りしたのかは、この問題に関してはあまり意味がないように思う、ということだ。ここで僕らが問題にしなければならない事実とは、ネットで流されたビデオで、香田さんは謝ったあと「もう一度日本に帰りたい」と発言していた点である。彼が完全に自殺を決意してイラク入りしたのならば、彼のこの発言は矛盾するだろう。それゆえ、僕は、彼は自分の無謀さに気づいて謝りはしたけれど、だからといって殺されたいと思っていたわけではないと考えた。そして、日本政府は、自衛隊の撤退を約束することによって彼の命を救えるかもしれない可能性に賭ける選択肢を持っていた。しかし、小泉はこの選択肢を選ばなかった。その意味で、小泉は香田さん殺しに直接的な責任を負うと僕は判断したわけである。

 もっといってしまえば、香田さんが、かりに脱獄した元オーム教団教祖の松本被告だとしても、日本政府は同じように「最大限の救出努力=自衛隊撤退」を選ぶべきだと僕は思っている。彼は被疑者で最終審が結審していないのだから、なおさら司法の手に取り戻すべきだろう。

 つまり、香田さんのキャラクターとか不注意さとかは、誘拐され脅迫内容が明らかになり、彼の助かりたいという意志がはっきりした時点で、問題にならなくなったのだと思う。現在の時点で香田さんの行動やキャラクターについてとやかくいうことは、それらの論者自身が彼を救えなかった自らの罪悪感から逃れるために行う詭弁・自己欺瞞でしかないと思う。

 今朝の朝日新聞朝刊に、ファルージャの戦闘に対して、イラク首相は支持を表明、イスラム宗教指導者はイラク人治安部隊に対して米軍への非協力を要請したという。さて、どちらが正義なのだろうか? 言うまでもないだろう。